応接間

□熱
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黒崎くんは、ずるいの
ほら、そのほんの少しの目線の変化で、あたしの心は波に揺られる小船のよう

<熱>

躊躇いもなくすっと触れてくる手
もうこんなことが当たり前のように

全然、ぜんぜん当たり前なんかじゃないよ
こんな、こんなことどうしたって耳まで赤くなっちゃうのに
なのに逆らえないあたしがいるの

いつの間にか耳に触れそうなほどの距離にいる唇は
吐息と低く優しい声とをあたしに投げかける
「織姫・・・」

あたしの首筋はちりちりと逆毛立ちそう
うん知らなかったの、聞きなれてる自分の名にこんなにぞくぞくする日が来るなんて

ずるい、ずるいよ黒崎くん
学校では「井上」って呼ぶくせに
お友達の前でもそうなのに


琥珀の瞳は切なく潤み
あたしの理性を飲み込んで狂わせて

「織姫、織姫・・・」
呼ばれるたびにあたしの中から生まれる熱は
やさしいやさしい手の動きと共にあたしの全部に広がってゆく


ずるいよ黒崎くん
あたしはもうこんなに


あなた なしでは いられなく


引き寄せられるように唇を重ねればそれが合図
ああ、あたしはもう
熱く猛った身体にきつく抱きしめられて
蕩けそうになりながらすべてを露にさせられてゆく
あの二人だけの至福の時をただ待ち望み、迎えようとするだけの存在

「・・・一護、くん・・・一護くぅん・・・」
そしてあたしはうわ言のように呟くの、いつもは呼べないその名前を
ずるい、ずるい、でも愛おしくて堪らないその名前を


  end
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