応接間

□Trick or Treat?
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「井上!こっちだ!」
息を切らし駆け込んだ、オレンジに彩られた部屋の中。ランタンの炎が照らし出すは、異世界に通じてしまいそうな大きな洋服ダンス。
「・・・う、うんっ」
ぜぇぜぇしながらも忠実に一護の示すその洋服ダンスの観音開きの扉を開ける織姫。
「よし大丈夫だな、急げ・・・!」
織姫の背を押し洋服ダンスに押し込むと、一護は自らの身をもするりとそこに滑り込ませ、中から扉を閉めた。



今宵はハロウィン

のし歩くは怪物、魔女、イヴィル・スピリッツ

闇夜の黒と炎のオレンジとに彩られた街で

一夜限りの宴を楽しまん




 <Trick or Treat?>



タンスの中は当然の真っ暗がり。それでも入っているべき洋服はほんのわずかで、相当な空間が確保出来る筈なことは入る前に見て取れていた。
「井上?どこだ?」
「ここだよ、黒崎くん」
愛おしい可愛い声に安堵の溜め息を漏らし、声に向かって手探りすれば柔らかな感触。
「ふやぁ?」
「わっ悪りぃ・・・」
どこに触ってしまったか一瞬で分かった一護は暗がりの中で顔を赤らめた。


「あっそっそうだ!浦原さんからこれ貰ったんだった!多分使えると思うよ?」
「?何だ?」
一護の声とほぼ同時に、ぽぅ、と小さなオレンジ色の灯りが現れた。
「・・・かぼちゃ・・・?」
「じゃーん、ミニ・ジャック・オー・ランタンでーす!」
織姫の嬉しそうな声に慌てる一護。
「おっおいっでけぇ声出すんじゃねぇ!」
「あっごっごめんなさい!」

(あのゲタ帽子、井上にはこんなもん渡しやがったのかよ。ンなものよりどうせならもっと沢山・・・)
「えへへ・・・やっと黒崎くんが見えるようになったよ」
ゆらめくオレンジの光の中、織姫が安心したように笑う。
「お、おう。そうだな。」
「でもどうして黒崎くん、仮装がそれなの?」
織姫が小首を傾げるのももっともで。一護はいつもの死覇装姿。
「浦原さんが準備した妙な衣装なんて着れるかよ・・・」
「え〜・・・見たかったなぁ黒崎くんの仮装・・・」
そう言う織姫は黒いとんがり帽子と、黒地に赤が鮮やかな可愛らしい衣装を身につけていて。
「井上はそれ・・・」
「えへ、魔女なのでーす。ちゃんとね、魔法のスティックもあるんだよ?」

(ヤ、魔女だってのは分かるが、俺が言いたいのはだなぁ・・・その・・・む、胸が強調されすぎじゃねぇかってことなんだが・・・)

一護が心で思うのも当然、織姫の衣装は露出こそそう高くないものの、胸を覆うふんわりした赤い生地のすぐ下で、黒い生地が丁度アンミラの制服みたいにきゅっとしまって、その前をこれまた赤いヒモでバッテンに留められている格好。そのせいでかの”特盛”が普段よりもより一層大きく感じられ。
そして、スカートはひらひらしたフリルつきのふわりと広がったミニ。目の前でぺたんと座られると、フリルから白い太腿と膝が覗くのがなんとも・・・

(い、いかんいかんっ俺!今はここでじっとおとなしく隠れてこの時間をやり過ごすのが先決であって!り、理性だ理性!)


そうだここでンなことになったらそれこそ浦原さんに後で何を言われるか分かったもんじゃねぇ、と一護は思った。
大体、こんな羽目に陥った元凶は浦原さんであって・・・いやそんな誘いに乗った自分が悪いんだが、と再び溜め息をつきながら思い出す今夜の始まり。
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