応接間

□ひざまくら
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これはどういうことなんだ。

手にしたコンビニの袋を取り落としそうになったまま固まる俺の目を射る赤い髪。

間違いなくここは俺の、俺の大事な・・・か、彼女の家であって。
遊びに来て、なーんて可愛い声で電話されたらそりゃもう色々買い出ししてやってきちゃう訳であって。
なのにそんな赤い髪やボウズ頭やおかっぱ野郎がたむろしてるなんて・・・信じらんねぇだろぉ?

ましてだ。
気持ちよさそうに転がってるその赤色頭が乗っかってる場所たるや。

「おぅ一護。買い出しサンキュー」
「あ、黒崎くん!いらっしゃーい!!」

その胡桃色の髪のにこやか笑顔の、キチンと揃えられた膝の上。


なんでだよ。
ありえねぇよ!井上ぇ!!

あれかそれっていわゆるあの、あの・・・・
ひ、膝枕、って奴じゃ・・・??


<ひざまくら>


「・・・なにしてやがる・・・」
「ああ?」

いぶかしそうにその頭を上げた恋次に代わって答えたのは一角だった。
「何って、膝枕だぜ。知らねぇのか一護?」
「ンなこと知ってる。俺が聞きてぇのは!なんで井上が恋次にしてるのかってことだ!!」
「あ、あのね黒崎くんこれはね」
「いいって、織姫ちゃん。ここは僕から説明しようか。実は先ほどTVのどらまとかいう奴でだね」

「あーんきたきた〜〜〜おつまみちゃぁーん♪」
一触即発な俺の空気も読まずに横から飛びついてきたのは乱菊さん。
「俺はおつまみじゃねぇ!!」
「あらーーー何ケンアクな霊圧出してるのぉ?た・の・し〜〜〜くやりましょうよぉ〜〜?」
「てめっ酔ってやがるな!あっ!てことはてめぇら!!」

皆すっかり酔ってやがるのか!?
酔っ払って井上に絡みやがったな??!!
それで、それで!井上がイヤと言えないのをいいことにそんな真似を無理やり・・・!?
お、俺ですらそんなことしたことねぇのに!!

「・・・離れろ」
メラメラと怒りの炎が心に燃え滾り、俺は未だ寝転がっている恋次に低く告げた。
「井上から離れろ、恋次ぃ!」

俺の怒りにも関わらず、恋次はニヤニヤと答えた。
「あー、そうはいかねぇなぁ」
「ンだとぉ?」
「まだ5分経ってねぇからなぁ?そうっすよね、一角さん弓親さん?」
「ああ、そのとおりだぜ恋次。」
「そうそう、取り決めはきちんと守らないとね?」

妙に落ち着き払って答える3人にキレそうになりながら俺は叫んだ。
「何えらそうに言ってんだよ!なんだ取り決めって?!大体なんだっててめーら井上の横で正座して一列に並んでやがんだよ!!」
「何って・・・順番待ちだぜ?」
「そうそう、順番と時間はきちんと守ってこそ美しいのだよ。君も織姫ちゃんに膝枕してもらいたいなら一角の後ろに並び給え。」
「じゅ、順番待ちだとぉ・・・?」
するとなにか?こいつら寄ってたかって順番に俺の、俺の大切な井上にそんな、そんなことさせるつもりで・・・??
「ふざけんなぁ!!井上は、井上は遊園地アトラクションじゃねぇえー!!」
「上手いっ一護!座布団一枚〜〜〜♪」
「乱菊さんも乱菊さんだ!なんでこいつら止めねぇんだよっ!!」
「えーだってぇ、あたしは膝枕するのイヤだったから織姫に頼んだんだもの」
「あんたかぁ!焚きつけたのは!!」
「なによー折角呼んでやったのに!?この乱菊さんに文句言うつもりなのぉ?まっおつまみが足りなかったから織姫に電話かけさせただけなんだけどね?」
「それもあんたの仕業かよっ!?」

「ああ恋次。そろそろ時間だよ、代わり給え。」
「えっもうっすか弓親さん?」
「足らねぇなら俺みてぇにまた並ぶんだな、恋次。」
「ああやっと僕まで回ってきたよ・・・織姫ちゃん、よろしくね」
「あっはい・・・」
「!ってえっ!!何回目なんだてめぇらァ!!」

俺の怒りは一気に沸点を突破した。






      ( 暗 転 )

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