ないしょの屋根裏部屋

□埋め尽くす
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ベッドの中、俺の身体の下で息づく井上はただ熱く、柔らかく。
俺の奥底のオスを呼び覚ますだけの存在。
そうだいっそそれだけだったら。どんなにか。

<埋め尽くす>


「目、開けろよ。」
「や・・・うぅ・・・ん・・・」
熱っぽく潤んだ瞳。薄く開いてまた閉じかける。
その目が俺だけを見ていることをただ確かめたくて畳み掛ける。
「ちゃんと見ろよ。お前が今、誰に抱かれてるのかをよ。」

言いながら掬い上げるその身体。汗でしっとり濡れて、なめらかそのもの。
尻をついて座った格好で、繋がったまま腰の上に抱きかかえれば、声を上げてしがみ付いてきた。
急な体勢変化で、バランスがとれなかったのだろう。いつになく強い力が籠る、細い腕。
もっと、もっと。
俺の肩に背中に、赤く傷痕を残すくらいしがみ付けばいい。
そんな気持ちと裏腹に、俺の口は意地悪く。
「そら、こうやって起き上れば目ぇ開けられんだろ?」
「やぁ・・・だって、これぇ・・・!?」
びくり、と震えたのは、俺が軽く突き上げたせい。
「ン?どうしたんだ?」
ベッドに左手をついて二人分の体重を支えながら、自由な右手で乱れた胡桃色の髪をこめかみから梳いて。
やっと開いた瞳を覗き込んで、落とし込む。
「だって、こんな・・・っ・・・い、いつもより・・・」
自分の脚でようようバランスとって、浮かせようとするその腰を両手で捕まえぐいと引き戻す。
「きゃぁあぅ!?や、やぁんだめぇ・・・」
「何が、だめなんだよ?」

苦しそうな呼吸。いやいやをする頭。
逃がさない、離さない。
お前が俺をしっかりと感じ取って、俺のことしか考えられなくなるまで。
猛る気持ちのまま揺さぶり続ける、なまめかしい身体。

「は・・・あぅ・・・だめ、こんなのぉ・・・」
甘えるように胸にすがって来た手。俺の肩に乗せられた可愛い顎。
そうだ、もっともっと。俺だけを頼って。
「だめじゃねぇだろ?そら、こっち向けよ?」
軽く引き起こして、また正面から見詰める。
蕩け始めた目。唇は力なく軽く開かれ。。
赤く色づいたそれを人差し指でなぞり、そのまま中へと捻り込んだ。
直ぐに指に絡んでくるやわやわした感触。ぞくりと走る快感。

「あ・・・」
抜き出せば名残惜しげに。半開きで誘うその下唇を、今度は己が唇でついばむ。
「ふ・・・う・・・く、くろさき、くぅん・・・」
鼻にかかったその声を合図に、期待に応えるべく舌を絡ませた。

甘くて、頭をどろりと侵食するその味を。

猛り狂い、貪って。

お前が’挟まれた’記憶なぞ欠片までも消し去るために。
奥の奥、隅の隅まで完璧に。
微塵の残滓も残さぬように。

お前の ナカを 満たすのは 俺だけ。
過去も、そしてこれからも。


「あ、あ、ああ、や、やだぁっくろさき、くぅん・・・」
溢れ返る凶暴な衝動。
追い詰め墜とすためだけの、激しい行為。

言葉は脳内から消えかけた今、
この突き上げ捻じ込むだけの動きを愛と呼ぶしかないのだから。

「井上、井上っ・・・いのうえ・・・!!」
叫び吐き出す、至上の快楽。
お前のすべてを、俺のものに出来るなんて錯覚と共に。



そしてこんな風にしか、確かめ合えない身体を呪うのだ、目覚めれば。

end
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