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□いつもの朝
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<いつもの朝>
「おはよー!」
いつもの朝。
いつもの教室。
いつもの挨拶。いつものお友達。
毎日毎日意識することもなく、繰り返される日常。
それは空気のように馴染んで、ここと違うどこかを唯の夢に変えてしまう。
「あ、おっはよー!黒崎くん!!」
うん!今日も元気よく挨拶出来たよあたし!!
「おう、井上」
いつもと同じ、ちょっとぶっきらぼうな挨拶。
それでそのまますぐに自分の席に向かうんだよね。
ほら、向かって・・・??
いつものクセでその背中を追おうとした視線の先。
なんで?
なんでそんな目でこっち見てるの??
引き込まれる様に目が合ってしまった。
心臓がとくっと音をたてる。
固まる身体、痺れる頭。
あ、あたし・・・
まさか顔になんかついてる?
あっ朝食べたコーヒークリームパンのクリームがべったり、とか??
そんでもってクリーム食べたいくまさんの群れが校庭にわぁーっと押し寄せてきちゃって・・・
だめだよっ黒崎くん!くまさんは蜂蜜が好きなの!カレーじゃおびき寄せられないよっ!!
「蜂蜜!はちみつだよっ!!」
「ど、どうしたのっ織姫??」
「いっちご〜おっはよ〜〜ぐほうっ!!」
あたしが叫んでたつきちゃんをびっくりさせたのと、浅野君が黒崎君に裏拳くらったのとはほぼ同時でした。
いつもの朝、いつもの騒ぎ。
いつものあたし。
そしてきっといつもの・・・黒崎くん。
急いで顔をこすったけど、何にもなかったの。
じゃああたしの後ろになんか面白いものあったのかな?
うん、きっとありふれた、いつもの、なんでもない学校の朝。
帰ってこられると思わなかった、幸せな朝。
また目をぐいっとこすったら
「織姫あんた何顔こすってばっかいるのよ?」
ってたつきちゃんに言われちゃった。
「え?・・・ちょ、ちょっと蚊が、ね?」
「冬だよもう・・・それに蚊なら叩くんでしょ」
大好きな朝。
大好きなたつきちゃん。
それから大好きな・・・
また、あなたを想える毎日に戻れて、うれしいの。
だから、また、いつものように、そっと見ていさせてね?
いつもと同じに・・・
きゅん。
さっきのあの目を思い出して苦しくなった。
それは
おなじだったはずのひびが
ちがってきている
しるし
なんて
ぜんぜんしらなかったの