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□一言の勇気
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「黒崎くん、さよなら!」
「おう、またな井上」

そんな挨拶を交わすのが日常。
そうして俺はルキアと帰り、井上は部活に行ったり友達と帰ったりするのが普通。

でも、でもよ・・・

そんな日常を変えたくなっちまった、なんて思っちゃ、いけねぇか?


<一言の勇気>


帰りのHRも終わって、ざわめきもひと段落。
普段ならあー一日終わったとほっとして帰る時刻、なのに今の俺ときたら。
サボリがばれそうな時より、テストが返される時よりも緊張しちまってるなんて。

大丈夫、大丈夫だ。
たつきは部活へと足早に教室を出て行った。
あいつは今一人きり、鞄に教科書をしまってる。

もうすぐ言われるいつもの挨拶。
でもその時に、いやその前にでも。
・・・ああなんだよこの変な汗は?落ち着け俺!


「黒崎くん、さよな・・・」
「い、井上!」

いけねぇ!
ナニ井上の挨拶遮ってるんだよ俺!焦りすぎだっての!!
ほらみろ、井上がびっくりしてやがるじゃねぇか!!

「ヤ、すまねぇ、その・・・」
言え、言うんだ!あんなにシミュレーション繰り返したじゃねぇか!!
そうハッパをかけても俺の口から出た言葉は。
「あ、あのな・・・?」
「??」
きょとんとした顔に変わった井上。ああこのまんまじゃアヤシイって俺!


「そ、その・・・今日一緒に帰らねぇか・・・?」


言った!言えたぜ!
心臓バクバクなのを必死で隠して唾を飲み、井上の返事を待つ。

「あ・・・」
井上はちょっぴり顔を赤くして。でもすぐににっこりと笑ってくれた。
「う、うん!そうだねっ?たまにはいい、かな?」

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