押入れ
□七夕、望月
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古来、七夕は上弦の月。
でも現在、今日この日は。
<七夕、望月>
(天の川はどこだろう?)
ベランダから眺める空は、月の光で明るく薄く。
その裾野は地上の灯りに染められる。
「あ、見つけた!」
薄黒い夜空に燦然と青白く。
こと座のベガ、織女星。
約束の時を座して待つように。
(一年に一度、だものね)
晴れてよかったね、と心の底から思ったのは、井上織姫。
一年に一度、しかも雨が降ったら会えない七夕の星。
(でも・・・)
恋しい人と必ず会えて、必ず自分を見詰めてくれる、約束の日があるなんて。
(ちょっとだけ、羨ましい、かも・・・)
黙っていれば何もない。
なんの繋がりも約束もない、自分、と。
名前は同じ、だけど。
揺るぎない約束を持つ天の織姫を、遥か遠くに見上げて溜め息をつく。
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