押入れ

□青空を待つ
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梅雨入り宣言された空は、毎日雲に覆われて。
朝降ってなくったって傘はちゃんと持ってこないといけないの。
ほら、放課後の校庭を眺めれば、色んな色の傘の花。
一人ひとりがそれぞれに。


<青空を待つ>


昇降口で取り出した、明るい空色の花柄傘。
晴れた空みたいで気に入って、今年買ったばかり、なんだけど・・・

「どうしたんだ?帰ろうぜ?」

傘を手にして立ち止まってしまったあたしを呼ぶ、黒崎くんの声。

「う、うん・・・」

促されてぽちん、とボタンを押せば、力強く開く傘。
ああ、早すぎるよ・・・

「いいなその傘、濡れにくそうで」
「あ、そ、そうなの、それが気に入って、ね?」
「大きさもあるし、こう、深くカーブしてるもんな。絵に描いた傘みてぇによ」

そうなの。
いかにも傘です!って感じの曲がり具合で、すっぽり被さってくるような感じで可愛くてね?

・・・そう答えようと顔を上げたあたしに見えるのは、空色の花ばかり。

「でも、ちゃんと前は向いて歩くんだぞ?」
なんて言う声はどこか遠くから聞こえてくるみたい。



・・・寂しい、な。
一緒に歩いてるのに、大好きなオレンジ色が見えないなんて。
やっとこ見えるのは半袖から覗いた引き締まった腕。
せめて触れたいな、って思ったのに。

あたしの傘、黒崎くんの傘。
2つの傘の長さの分隔てられた距離が、とっても遠いよ。
その上冷たい雨は手を伸ばしちゃだめ、って言ってるみたいで。


あたしを覆う小さく丸いニセモノの青空は、そんなあたしを嗤うみたいに明るすぎて。


――やっぱり、本物の青空じゃないとだめ、なんだね――

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