押入れ

□ゴールデンウィーク
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ゴールデンウィークは医者といえども流石に休みだからって。
「家族のスキンシップ旅行だー!」と浮かれるヒゲに無理矢理連れ出された妹達、そして俺。
混雑の中出かけて行ったものの、帰りはやっぱり大渋滞。
家に着いたらもう日も暮れて、月明かり。


<ゴールデンウィーク>


「おい夏梨、着いたぞ?」
隣の席の妹を揺すり起こせば眠たい目をこすって。
「うーん・・・って!もう夜じゃん!?」
「まあ、このくれぇで帰れただけありがたいんじゃねぇか?」
そう言って助手席の遊子を抱え上げるヒゲ。眠り込んだままなのはムリもねぇ、早起きして弁当だおやつだと作りまくってたんだからよ?
「だって!どうすんのさ一兄?」
「ど、どうする、って・・・しょうがねぇじゃねぇか?」
夏梨の目は縋るように、しかし直に怒りを帯びて。
「しょうがねぇって!なんだよそれ!!」

どん!

車から蹴り出される俺。

「っ痛ってー!なっ何すんだよっ!?」
思わず声を荒げた俺の前にずいっと差し出された紙包み。
「・・・へ?」
「『へ?』じゃないよ!とっとと渡しに行けっての!」
言われて思い出す、旅先で大喜びでこれを買っていた遊子の様子。
「ヤ、今更持ってってもよ・・・?・・・別に明日だっていいじゃねぇか・・・?」
「明日になったら固くなっちゃうだろ!つべこべ言わず持って行けよっ遊子ががっかりするだろが!!」


車から荷物さえ降ろさずに歩き出した俺は、携帯を取り出す。
だってよ、流石に夜急に訪ねちまうのはよ・・・なんつーか、その、よ・・・
渡すだけ、渡すだけだ。
そう自分に言い聞かせながら鳴らすコール音。

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