押入れ

□光の木
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「うわぁ〜、綺麗だね!」
光は青の円錐を描き、7つ8つと立ち並び。
降る星を思わせるアーケードの空の下には、金色にまあるく輝くイルミネーション。



<光の木>

「すごいなぁ、すごいなぁ!」
もうあの光の木々の近くに行きたくてうずうずしている彼女を横目で確認、頬が緩む。
「・・・なんだよ、もう帰るんじゃなかったのか?」
つい軽くからかいたくなっちまう、意地悪したくなっちまう。
「あ・・・・・・そ、そう、だね、黒崎くん門限に遅れちゃうしね?」
’あ・・・’の後の一瞬のしょんぼり具合が笑っちまうくらい可愛くて、相変わらず俺の心配ばかりするのがいじらしくて。
「そ、そうだね帰ろう!?え、駅はこっち、だったよね??」
無理矢理な笑顔で道の先を指さす手をぐいっと握って引っ張った。
「・・・ひゃああああ!?どどどっどうしたのぉお??」
「こっちからだって駅に行かれるんだぜ?」
井上の手に指を絡めるように握り直して誘う、あの青や金の光の空の下。


「・・・・・・」
足取りがゆっくりになった井上は、夢中でアーケードを仰ぎ見て。
「・・・キラキラだねぇ・・・?」
「そうだな・・・でもあんまり上ばっか見てっと、転ぶぞ?」
「平気だもん、だって黒崎くんと一緒だから!」
あああ、急にンなこと言って繋いだ手にきゅっと力なんぞ込められた日には、俺の心臓まで掴まれたみてぇで。
でも心がほこほこ温まって、体全体にあったかいほわほわしたものを流し込んでくれるみてぇだ。

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