押入れ
□衣替え
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<衣替え>
見上げる角度は25度。
ほら、いつものオレンジ色があたしの心を捕まえる。
肩に担いだ手提げ鞄、持つ手は昨日と変わらないのに。
その肩の、背中の白さが眩しくて。
短い袖から伸びる腕にちょっぴりどきっとしてしまう。
・・・声、かけようかな。
でもなんだかもったいなくて黙ってこっそり後ろを歩く、あたしって実は怪しい人?
うん、実はあたし、スパイなの。
今日のターゲットは黒崎一護、泳がせて尾行して宝のありかに案内させるのだ!
”見失うなベガ1号!””ラジャー!!”
ふーむ今日のターゲット、ぽっこりした可愛い肩甲骨してますな。
鞄を持つ手の長い指、かっこいいなぁ。
オレンジ色から覗く耳もキュートだし。
そしてその、振り向いた笑顔も・・・
「おぅ、井上。」
「ふひゃあ!?」
しまった!任務失敗であります隊長!!
「・・・ンだよその返事は?」
「あ、あああ!お、おはようっ黒崎ターゲットくん!」
「ターゲットぉ?」
「えええちっ違うよそれは企業秘密なの!!言っちゃだめなのっ!!」
あああ・・・またやっちゃった(しょぼん)。
ぽんぽんっ。
頭を軽く叩かれてびっくり。
「まーたヘンな妄想してぼーーーっとしてんじゃねぇぞ?ったく」
うわぁあのかっこいい指が手が、あたしの頭に!!
「ほらっもう行かねぇと遅れるぞ?」
「う、うん!」
ついて行こうと急ぎ足で歩く道は青葉に囲まれキラキラキラ。
斜め後ろから見る黒崎くんは、後ろから眺めるよりもっと、もっと・・・
どきどきしはじめる胸、ほてる頬。
風は薄いブラウスをするりとすり抜け、そんなあたしを心地よくさせてくれる。
でも、それも今のうち。
暑い夏はもう、すぐそこに。
end