押入れ

□借り物競争
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借り物競争は、男子5組、女子5組に割り振りされてて。
あたしは女子の2組目。
黒崎くんは・・・3組目?それとも2組目かな??

男子、2組目スタート。黒崎くんはいない。
うーんやっぱり3組目かぁ、ああっでもこの座った体勢じゃ前の組に阻まれてスタートがよく見えないよぉ・・・

パン!
わぁっ3組目スタート!見えたよっオレンジ色が!!
頑張れ、頑張れ、頑張れー黒崎くん!!

障害物はソツなくこなした黒崎くん、今頃多分トラック半周分先に置かれたカードを取って。
(並んでるあたしからだと真後ろだから、これまたよくは見えないんだけど・・・)
頑張って黒崎くん!ピンと来たものに一直線!だよっ!!
「井上っ!!」
「はいっ!?」
ひゃ、ひゃああああ??
ななっなんで今走ってた黒崎くんが目の前に??ていうかあたしの列の真横にいるのぉ??
「来い!一緒に来てくれっ!!」
「ふぇ??ひゃああ!!」
前後の人を掻き分けてあたしの横に来た黒崎くんに、手首をぐいっと掴まれ立ち上がらせられる。どよめく出走待ちのみんな。
「時間がねぇ!走るぞ!」
「あ、わ、わわわっ!!」

あたしは黒崎くんにひっぱられて蹴躓きそうになりながら、借り物カードラインへ戻って、ゴールを目指しトラック4分の1周分を回る。
(うちの学校の借り物競争はルール厳しくて、借り物して来たらカード拾ったラインまで戻らないといけないの)
手首を握ってる黒崎くんの手は力強くて、走る速度は速くて。
あたしの心臓は走ってることプラスアルファの要因からタップダンス踊ってる。
ゴールテープまであと5メートル、4メートル、3、2、1!
「きゃあぅ!?」
黒崎くんがゴールテープ切ると同時にあたしは脚をもつれさせ前のめりに倒れた。

「井上!!」
慌てた黒崎くんがまたぐいと手を引いて、あたしを起き上がらせようとする。
「悪ぃ!!走るの速すぎたんだな?!」
「う、ううん!?大丈夫だよっ勝手に脚もつれさせただけだから!黒崎くんはちっとも悪くないよ?」
「って!!膝すりむいてるじゃねぇか!早く手当てしねぇと!!」

「おーい黒崎ぃ!借り物カード提出しないと順位確定されないってわかってるか??」
それは借り物競争係の越智先生の声。
「大変!黒崎くん、カード出して!」
「あ?」
「カードだよ!カード提出して、借りてきたものと照らし合わせてOKもらわないと1位がフイになっちゃうから!」

「どれどれ・・・よし!借り物は妥当だな、1位決定」
カードとあたしとを見比べた越智先生の言葉に、あたしは思わず快哉を上げる。
「すごーい!すごいねっ黒崎くん1位だよ!!おめでとう〜!」
「お、おう・・・サンキュ・・・」
照れくさそうな黒崎くんの声は、観客席側からの鋭い声で遮られた。
「織姫!!何やってんのよっ早くスタート位置に戻るんだよ!!」
声の主は・・・あれれ?たつきちゃん??
スタート位置?スタート・・・
「ああああ!あたしの順番!!」
スタート方面を振り向けば、あわわ、じょ、女子がもうスタートしてる??
「ああ、1組目がスタートしたところだな。井上、急いで戻んなさい」
越智先生が冷静に言った言葉なんて最後まで聞かずに、あたしはスタート位置目指して一目散。

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