押入れ

□青空を待つ
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「今日は降らねぇで持つんじゃねぇか、って思ったんだけど、やっぱダメだったな」
「そ、そうだね・・・」
「しゃーねぇな、今日は真っ直ぐ帰るか?」

うん、雨が降ってなければ、ちょっぴり寄り道するんだけど。
今日は公園も河原も開店休業。
・・・ああ、黒崎くんと一緒にいられる時間まで少なくなっちゃうなんて・・・

「そう、だね・・・」

とっても残念で、とっても寂しいのに同意しちゃうあたし。

「つか・・・やっぱちょっと小せぇんだよな、この傘。どうにも濡れちまうから、寄り道出来そうもねぇんだ。」
「ええっ??」

驚いて傘を大きく傾かせて見上げる黒崎くんの姿。
小ぶりの折り畳み傘の下で、窮屈そうな。

「あ、あのっ黒崎くん!」
「ん?どうした??」
「よ、よかったら!こっちどうぞ?!」

そう言って差し出したのは、あたしの空色の大きな傘。
我ながらグッドアイディアだよね、傘の取替えっこ。
だって、あたしならその折り畳み傘だって多分大丈夫だもの。
あたしよりずっと背も高くて肩幅も広い黒崎くんが大きい傘使った方が、きっと合理的だよね?


「いい、のか?」
目を丸くして言う黒崎くんに向かってこくこくと頷いた。
「あーー・・・でもよ・・・」
黒崎くんは頭を掻きながら何故かきょろきょろ。それからやっと決意したように。
「・・・そうだなそっちのが濡れねぇか・・・じゃあ、遠慮なく・・・」




黒崎くんはあたしの差し出した傘にすいっと入ってきて。
「悪ぃな、傘もうちょっと持ち上げててくんねぇか?」
「う、うん・・・って??」

え、えええええ?
な、なんで黒崎くん傘畳んじゃってるのぉ??
それじゃああたし差す傘がなくなっちゃうよ??

「これでよし、と。じゃ、俺が持った方がいいよな?」
「ふぇ??」
「・・・一緒に入ってくには、お前が持ってたんじゃ手が疲れそうだから、よ・・・」
「へ?い、一緒??」

あたしの頭は軽くパニック。
だってそれって一つの傘に二人で一緒にって!
ぞ、俗にいう相合傘ってことだったり・・・ひゃあああああ!!

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