押入れ

□寒い日
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その日はとっても寒くって。
ファンヒーターの無い台所は空気まで冷え切ってるのに。
それでもコタツから出たくない誘惑を振り切って台所で片付け物とお茶の支度をするあたし。
だって、今日はこれからゆっくりしたいから・・・



<寒い日>



ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。あたしは慌てて手を拭くと飛びつくようにドアを開ける。
「いらっしゃい!!黒崎くん!!」
目の前にいるのはオレンジ髪の、待ちかねていた大好きな人。
何度来て貰ってもその度嬉しくて、どきどきして、なのに顔が思いっきり笑ってしまうこの瞬間。

黒崎くんの上着を受け取ってハンガーにかけていたら。
「井上ー・・・」
いきなり後ろからずしっと凭れ掛かってくる体温。
覆いかぶさるように肩から前に回された腕は、ぎゅうっとあたしを抱きしめてくる。

「ど、どうしたの黒崎くん?」
「・・・寒ぃ・・・」
「え!!?」

あたしは自分の胸元近くに回された黒崎くんの手にちょん、と触れる。
「ひゃあっ冷たい!?大変黒崎くんっ!!待ってて、今あったかいコーヒー淹れるから!!」
そうだよねっ今日は外とっても寒くて!雪降るかも、なんて言ってたくらいで!!
「コタツに入って待ってて??すぐだからね?」

そう促したあたしの声に答えもせずに今度はすりっと頬を寄せてくる。
ひやっとしてるのに、触れられたあたしの頬はかああっと熱くなって・・・
ひゃああ、だ、だめだよっそんなことされたら!
あたし、あたし、真っ赤になっちゃうよ・・・

「・・・コタツだけじゃ足んねぇ・・・」
「そ、そそそうなの??あっファンヒーターもあるよ、温度もっと上げようか?」
「ヤ・・・もっといいもんが欲しい・・・」

もっといい暖房用品?なんかあったっけ??
あたしは頭をフル回転させて家にあるものを思い出す。
うーんと・・・ホットカーペットとかはないし、あるのはせいぜい湯たんぽとか?

「ご、ごめんね?後は湯たんぽくらいしかないけど・・・使う?」
「そうだな・・・」
「じゃあ押入れから出すから、ね?」

そう言っても黒崎くんの腕はちっともあたしを放してくれなくて。
「あ、あのね?これじゃあ取りにいけないよ?」
「・・・・・・別に取りにいかなくたってイイじゃねぇか・・・」

??
「で、でも寒いんだよね?なんかあったまるものがいるんでしょ?」
肩の上で黒崎くんの頭がこくこくと頷いている感触。
「うん、だったらちょっと放して、ね?・・・ひゃあ!」
急に引きずられるように後ろにひっぱられて、思わず悲鳴を漏らすあたし。
「あったまるなら・・・コレがいい・・・」
「こ、コレって!???」
「・・・つかコレじゃなきゃイヤだ・・・」
「へぁ??くくく黒崎くん???!!!」


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