彩りの始業鈴2
□彩りの始業鈴V−8
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雅 最戈
24年前に現役を引退した最高のヴァイオリニスト。
父さんがよく話してくれた。
何枚もCDを持ってるけど、凄いの一言しか出てこない。
それぐらい、演奏技術のある人だ。
「高杉くんよく知ってたね」
「あ、いや・・・・・」
「知っていて当たり前だからな」
「どうして?」
この人は知ってる。
というより、気付いてる。
片目を閉じて笑ったのが、何よりの証拠。
「彩鈴はまだ知らなくていいことだ」
「む〜」
口を瞑る彼女は1人だけ知らないことに拗ねているらしい。
でもな、これはまだ言えない。
もう少しだけ、待っていて欲しい。
その時が来るまで―――――。
「じゃあ浴衣合わせるからついて来て」
「はい」
彩鈴と一旦別れて、俺は最戈さんの後ろをついていく。
1歩が大きい分、離されないようにしないとならない。
しかし。
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