彩りの始業鈴2
□彩りの始業鈴V−7
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―――雅家
うわっ、でけェ家・・・・・。
和風の造りで、いかにも伝統ありそうな旧家だと窺えた。
「あ、お父さん帰ってる」
敷地内に入ると、微かにヴァイオリンの音が聴こえてくる。
・・・・・凄ェレベルだな。
聴いている限り、相当な実力の持ち主だと感じた。
「あがって」
「・・・お邪魔します」
余りの広さに気が引ける。
「狭いと思うけど我慢してね?」
「いや、異常にでけェから」
「え?
高杉くんの家ってもっと大きいんじゃないの?」
どうやら彩鈴の頭では、医者の家=異常に広いという方程式があるらしい。
ってか、たとえ医者でもこんな豪邸住んでる奴は数えるほどしかいねェと思う。
「確かに、でけェと言えばそうなるが、これの半分ぐらいだ」
軽く300坪はあるこの家よりでけェのは恐らく、双海の家ぐらいだ。
土方が言うに、双海の家には道場があり、ピアノを練習できる離れがある上、日本庭園を思い浮かばせる立派な庭まであるらしい。
500坪ぐらいあるんじゃねェか・・・・・?
「1度行ってみたいな〜」
「・・・それはやめてくれ」
万が一、家に母さんがいたら・・・・・。
彩鈴が喰われる!!
可愛いものと綺麗なものに目のない人だから・・・・・。
「あ。ちょっと待っててね」
建物は和風造りだったが、中は洋室がいくつか存在した。
彼女はその一室に近寄り、中にいる人に声をかける。
その途端、ヴァイオリンの演奏が止まった。
部屋から出てきた人に、俺は頭を抱えそうになった。
2009.04.21