§短編書物庫§

□SSS(ショート・ショート・ストーリー)
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ザッ……ザッ……ザッ……ザッ……

辺り一面に生え渡る雑草を踏み締めながら、先へ先へと進んでいく。

この先に何があるのかは分からない。

ただ、自分の中にある『直感』が、この先には何か素晴らしいモノがあると告げている。

それは当たるか外れるか分からない賭け。

この『直感』が正しいのかと言われると、あまり自信は持てない。

だが、行かないで後悔するのだけは絶対に嫌である。

ザッザッ……ザッ……ザッ……

歩いている途中、一ヶ所だけ不自然に草が踏み付けられている後を見付けた。

そしてその先には、明らかに人が掻き分けて入った様な痕跡が残っている茂みがあった。

私は戸惑うこと無く、その道に入っていく。

茂みの中はキチンと草が左右に払われており、掻き分けていく必要が無かった。

でもそれは、明らかに誰かがこの道を通っていたという事である。

そんな事を考えながら、さらに奥へと進む。

ザッザッ……ガサッ……ザッ……

真っすぐに伸びる道をひたすら歩く。

(あっ……)

茂みの道はさほど長くはなかったらしく、すぐに道が開けた。

そこは、海が一望出来そうな場所であった。

私はそのまま崖の淵近くまで歩き、海から吹いてくる風でなびく黒髪を押さえながらその場に腰を降ろすと、持っていたショルダーバックの中からあるモノを取り出す。

カラカラ……カラカラカラ……

それは、赤と青の紙を使って作られた風車。

海から吹いてくる風に吹かれ、風車はカラカラと回っている。

回っている風車は、赤と青が交ざり合って紫色になっている。

私はその風車を、水平線へと沈んでいく夕陽と一緒に、いつまでも見続けていた。





そして私は不意に……





「誰か……早く私を見付けて……」





そう、呟いていた。

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