§短編書物庫§
□【妹? 恋人? 着物?】
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ユサユサ……
「ねぇ、お兄ちゃ〜〜ん。起きてよぉ」
ユサユサ……
誰かに揺らされているのを感じ、俺は薄く目蓋を開く
目の前にルームメイトであり、俺【天ケ瀬大樹】の妹でもある【天ケ瀬小雪】が俺の顔を見下ろしていた
「んーー……朝から勘弁してくれよぉ……折角の冬休みなんだからもう少し寝かしといてくれよぉ……」
俺は頭から布団を被る
「も〜〜。元旦の朝から布団の中に籠もらないでよぉ」
小雪が俺の布団を引き剥がそうとするが、俺は布団をしっかりと握り締める
「むぅ……あっ、そうだ♪」
突然布団を引っ張る力が無くなり、俺は一瞬だけ力を抜いてしまったのがいけなかった
「チャンス☆」
「あっ……!!」
小雪はその隙をつき、俺の布団を引き剥がしまった
部屋には暖房が入っているのか、それほど寒くはなかった
「おはよ。お兄ちゃん♪」
笑顔の小雪が俺に声を掛けてくる
しかし、あんまり頭が覚醒していない俺は、頭を掻きながらボーっとしていた
「お兄ちゃん?」
「んあっ?」
「もしかして……まだ起きてないの?」
俺は返事の代わり(?)に目蓋を閉じた
「ちょっとお兄ちゃん!?」
部屋が暖かいおかげで布団が無くても眠れそうだ
「もう、仕方ないなぁ……」
小雪が何か言っているのが聞こえるが、あまりの眠さに何と言っているのか分からない
「お兄ちゃん……ちゅ……」
小雪の甘い声が聞こえたと思ったら、唇に柔らかいものが重なり、俺は何事かと思い目を開ける
「……!!」
目の前に小雪の顔があり、唇が重なっていた
おかげで、俺の頭は一瞬で覚醒に導かれてしまった
小雪は目を見開いた俺を確認すると唇を離した
「おはよう。お兄ちゃん♪」
「あ、ああ……」
そして俺は、また別の意味でボーっとしてしまっていた
「どうしたの?」
小雪は不思議そうな顔で俺を見ている
「小雪……もう一回……キス……してくれないか……?」
「えっ? うん……ちゅ……///」
小雪は俺のお願いを聞き、もう一度唇を重ね合わせてくる
「……んっ。これで目が覚めた?」
「おう、ばっちりだ」
「良かった♪」
小雪はベッドから離れると、その場で体を一回転させた
よく見ると、小雪は着物を着ていた
「どう? 可愛い妹の着物姿は?」
「似合ってるけど、せめて可愛い【彼女】にしとけよな」
「あっ。そっちでも良かったね」
小雪はニコニコと笑っていながら俺を見た
彼女【天ケ瀬小雪】は、俺の妹でありながらも恋人なのである
詳しい事情は話すと長くなるので省略するが、小雪は小さい頃に俺の家に来た養子で、血は繋がっていない
だから、別に付き合っていても問題は無いのである
「んで、その着物どうしたんだ?」
俺は一番疑問に感じていた事を、小雪に尋ねた
確か小雪は着物を持っていなかった筈だ
それなのに、何故着物を着ているのかが疑問だった
「これ? なんか朝起きて部屋を出たら、ドアの前に置いてあったの?」
「はっ?」
それこそ意味が分からなかった
「他の部屋の所にも置いてあったのか?」
「そうみたいだよ? でも大半の人は着付け方が分からないみたいだけどね」
「それに比べて、お前はちゃんと着付けてるよな」
「それはそうだよ。此処フォーティア魔法学園に入学するまでは、よく一緒に初詣に行ったよね。だから一人で着付けるのは馴れてるんだよ」
小雪にそう言われ、俺は昔を思い出す
確かに小雪の言う通り、小雪が学園に入るまでは俺と小雪と親父の三人で、よく初詣に行っていた
その間母さんがいなかった事もあり、着物の着付けは小雪が一人でしていたのである
「それにしても……」
俺はマジマジと小雪を見る
「な、なに?」
「いや、改めて見ても可愛いなぁ……と思った」
「あ……ありがとう……///」
小雪は、男なら誰もが虜になるような可愛い笑みを返してくる
(小雪……その笑顔は反則だぞ……)
俺は立ち上がって小雪の手を握って引っ張った
「きゃっ!?」
ギュッ……!!
「ふわっ……お兄ちゃん……///」
「小雪が悪いんだぞ? お前がそんなに可愛いから」
「お兄ちゃん……ちゅ……///」
俺は小雪の唇を奪った
「小雪……大好きだよ」
「私もだよ♪」
俺質は互いに笑いあいながら、体を離した
「それじゃあお兄ちゃん。初詣に行こうよ」
「それはいいけど、この島に神社なんてあるのか?」
小雪は俺の問い掛けに対して頭を捻った
「どうなんだろ?」
ガクッ!!
「おいおい……」
俺は苦笑いを浮かべるしかなかった
「だ、大丈夫!! きっとあるって!!」
「うーん……こういう時はセーラ辺りに聞いた方がいいんじゃないのか?」
「ううっ……ごめんね」
「気にするなって」
俺は小雪の頭に手を乗せ、クシャクシャと撫でた