cat's cradle.

□うさぎの様な二人。
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「アンタが去って何があったか知ってるか?」




アンタがどんな事をしていたかなんて知らないし関係ない。
けどアンタがママから離れてる間も俺達家族のどん底の時間は続いていた。
それで同情しろとも、悲観しろとも言わない。俺も魅苓もアンタのことなんかどうでも良い存在にしか思ってないから。だから憎んだ。アンタが俺達家族の人生を狂わせた。
そう、俺達の見た事実はアンタが原因だから。
あの糞がママを奪ったとしてもその最初の原因を作ったのはお前であることには変わり無いから。







「アンタが居なくなってから、母は俺達の前から消えた。そして母は多々な精神病にかかった。そして二度と俺達を抱きしめて名前を呼んでくれなかった。」


「千代…が?」


「…十三の冬。俺達はこっちに来た。そして夜一さんの仲介で神村家に事実を伝えた、それでもこっちに来て母に会えたのは十七の成人式一回きり、ろくに会話も出来ないまま。そこで俺達が恐怖を覚えた。母に忘れられる…と」



おめでとうの一言だけ。
俺達の記憶の母では有り得ない。

素っ気なさ。
簡素な言葉。
何処を見ているのか解らない曇った瞳。


「お前に…解るか?この時の焦り悲しみ…すべてはあの日の男だと俺は思った。俺だけじゃねぇ魅苓も。すぐに解った。アンタだと。そして父親だという事実を調べる為に朽木白哉に力を借りた。それからは…俺も魅苓も母を失った悲しみは溜まって憎しみに変わった」



「…っ」



「そして…母は今…叔父に傀儡の様に扱われている。ずっと…一人…病気を抱えたままこっちに来てどんな扱いを受けたのかだってそこ知れない。良い訳が無い。それはどんな貴族に聞いたってそうだ。だから奪い返す事にした。」


「それが、俺を倒してお前等が二人で副隊長になるって話しか」


「そうだ。けどな……もう時間が無くなったんだ。」




唇を噛み締めた。


事実に混乱したままの男。
あの赤い鬼は目の前で無防備なのに…





「来年の春…魅苓は政略結婚させられ、母はそのために叔父の都合の良い男と結婚させられる…俺も貴族との結婚が再来年決まる。もう…なにもかも時間が無い……母は忘れていく一方。叔父の言い成りになって……俺達も貴族の殆どが焦りを感じている」



叔父は非道な人間だから。



「叔父は…母とは違い政界を追放されたんだ。言わば罪人だ。けど母はその逆。政界が欲しがる人材だった。けど叔父の失態もあり自粛していた。…それが今…最悪な形で政界に復帰しようと着々と準備を進めている…」


ふと朽木白哉を見ていた。


「総隊長様の力を持ってももう防ぎきれない…」


二つの事実が現実が俺に押し寄せる。
それは平然と暮らしてる誰もに降り懸かる事。









「っ…恥は承知だ」









竹刀の先をアイツの喉元に向ける。



悔しくて手が震える。











「千代様を…母を取り返す為にお前の力を貸してくれ………頼むっ…」













このあと魅苓に絶交されても言い。
だから…三人の時間を帰してくれ。
俺達には母が…ママが必要なんだ。


プライドなんか捨ててやる。だから…頼むから…







情けないと殴られるかもしれない。
こんな母を殴った奴に頼むなんて俺はおかしいのかもしれない。
けど…でも…


もう時間が俺を潰しそうで…
潰されている訳に行かなくて…




復讐すると誓った奴に頭を下げた。







折れた言葉にもうすがるしかない。
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