cat's cradle.

□歯車。
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「千代〜学校行くぞ」




窓の外から聞こえる声。私が反応する前に子供達が下りていく。

「いーちーっ」

「いっちー!!!」

三歳十一ヶ月。
大きくて重い玄関のドアを二人で開けて足元に飛びついている。

それを見て慌てた。



「一護ごめんっもぅ、ほら!零も魅苓も!一護お兄ちゃんでしょう?」


「いーちーおーいー」

「おにぃー」


なんか方向性見失った発言をしている子供達二人を抱き上げる。
バタバタ騒ぐ二人。まったく!とため息をついていると一護に笑われた。


「上がって行きなよ、二人もまだ着替えてないし」

「ちーえーやぁー」

「やぁあー」

「そんなこと言ってるとマユリ様が来ちゃうわよ」



顔を真っ青にしてしょぼーんとしている二人。一護が来るとすぐに幼稚園に行きたくないと駄々をこねる。
 一護は首を傾げている。まぁまぁ気にしないで!と言うと時計を見ていた。


「チャドも、もう来る頃だな」

「そうね、あ、鍵閉めてよ?」

「ん」



スリッパ出して、と言う前に腕から抜けた二人がどっちが一護にスリッパを出すかで争っている。
真っ赤な髪の毛の零、私と同じ髪の毛の魅苓。
二人とも今が一番ピークに煩い。
けど…同じぐらい可愛いのも確か。

スリッパは結局二人で片方ずつ出してるのを見て吹き出しそうになった。一護が情けないぐらい困った顔をしていたから。

馬鹿!こっちみんな!と言われハイハイと適当な返事をして子供部屋に行く。


すると魅苓が傍に来てこそこそと言う。



「あーのがきたい…」



あーの?と思いすぐ思い出す。この間買った可愛い赤と黒の服とワンピースの事だ。買う前から目を輝かせてぎゅーっと抱きしめて居たぐらい。
魅苓は一護が大好きでいっちょ前にお洒落をしたがる。昨日も私が化粧をしてると「みぃーもーっ」っと言ってきかなかった。

零はこの間口紅で素敵な模様を床と壁に描いて私に怒られてから怖がるようになった。



「良いわよ、ピンクと黒のコート、持って来て?」

「うんっ!」


そう言って走って行く。
ふとリビングの方を見ると…一護に抱かさり寝ている零。
何て言うマイペース…
と驚いていると一護がちょいちょいと手招きする。近くに行くと無邪気な寝顔がある。
一護と顔を静かに見合わせた。



「ママーっもってった!」


「はい、じゃぁこっちに服あるからおいで」

「うんっかみふわふわがいー」

「えぇー時間ないよ…」

「…じゃぁ…ふわでいー」



妥協する場所が違うでしょう!?
と思いながらコテをあっためる。

服を着ると次は私の使ってる鏡台の前に座りまだかなぁ?と言う顔で鏡越しに私をみる。

待ちきれないのか私の膝に座る。


「ほら、膝から下りて?髪の毛巻けないよ」


「はぁーいっ」


栗毛の魅苓。真っ赤な零。
二人ともなぜだか髪の毛を切ることを嫌がる。

だから魅苓は腰まである。零はそこまで伸ばす気は無いみたいなことを言ってたが、切るのも嫌らしい。おかげで定期的に切りに行ってる魅苓と違って伸び放題だ。




「かぁいくしてー」



「十分レイは可愛いよ」

「ぶぅ…」


最近可愛いと軽々しく言うと拗ねてしまう。


「仕方ないなぁ…ママのヘアゴム貸してあげるから許して?」

「いよーみぃママ好きだもん」


「ふふっママもよ」


二つに結び、巻いてあげると嬉しそうに織姫から貰ったヘアピンをつける。
鏡の前で物欲しそうに私を見る。


「今日だけだよ?」

「うんっ」


『魅苓専用』と書かれた小さな箱の中には可愛いリップや、消しゴムが沢山入っている。
これは私が預かってるもの。因みにお年玉も此処に毎年貯金されている。
お金の使い方がまだ解らない魅苓達には普通の紙に過ぎない。

その中かからお出かけ様のリップを出して口にちょんちょんとつけてあげる。
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