The girl stared at the boy.
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書類を燃やした。
神田が怒ってるのなんか見なくても解る。
僕に子供を?リンクと儲けてそれをどうするかなんか決められているも同然だ。
そんな…そんなことしない。
「上から圧力がかかったらどうする?」
「一人の命ぐらい良いとでも思ってんだろ?」
「そうは思ってない」
「嘘つけ!!!なら何故ここにお前の名前があるんだ?神田だと可哀相だから長官に言ってやったとでも言うんだろ?」
図星だったのか何も言わない。
そういう履き違えた優しさが大嫌いなんだ。ムカつくムカつくムカつく。
「何の騒ぎだね?」
「長官の話しをしていただけですよ、先ほどは挨拶もろくに出来ずすみません」
「気にする事はない、それより…私の話しとは?」
リンクが俯いている。
アレンを呼び、リナリーを預ける。
談話室に行くからと告げると、泣きそうな目をしてリナリーは出て行っていた。
神田にも出て行けと耳打ちをしても黙って座ってリンクをじっと睨みつけてる。
「この馬鹿馬鹿しい話しですよ、僕が子供を産む等と書かれていて笑ってしまいましたよ」
「そうか?私には興味深い話しに思えるが…」
くそ野郎と言い捨てたかった。が、出来なかった。
「この世に僕が二人居ても、僕のようなのが二人居ても長官達には不利益しか与えない。僕みたいに不良しか出来ないよ、僕の遺伝子では」
クスっと笑うと近くに来る。
「Joker、いい加減私の言うことを聞きなさい」
「Joker?僕はそんな名前もう捨てた。アレンにあげたはずだけど?」
「Jokerは二名、君も解ってるんだろう?」
「さぁ?ババぬきには一枚で十分だとおもうよ、二枚あったらゲームにはならないからね」
「三人ならどうだ?」
うまく言い返された。
あぁ…ムカついてムカついて…殺してしまいそうだ。
棒立ちのリンク、腹の探り合いを仕掛けて来るルベリエ。
庇いもしなきゃ賛成もしない神田。
Jr.がこの場に居ない事に少し笑えたやっぱりJr.じゃ役不足だ。
「僕の能力は万物に有効だ…」
「…」
「そんなに子供がほしいのならば貴方が産んで見れば良い」
静かに笑うとやっと食い下がる。
リンクは後ろで驚いた顔をしている。
「凌」
「っ!?」
「と瞬華を人質にとるなんて真似はしない方が良い、孕んでみたいならお好きにどうぞ、ルベリエ長官」
神田がくしゃっと頭を撫でる。いつの間にか僕は力を使おうとしていたらしい。その証拠に周りの物が数センチ浮いていた。
「…はぁ……」
深くため息をついたのは私じゃない。目の前の長官だった。
その仕種に見覚えがあり、さっきの書類を再生させた。
「…どうしたんだ?」
神田の呼びかけに答えようとすると…
書類を見て青筋が額に浮かぶのが自分でも解る。
「長官…コレは私利私欲の為だね?」
「…な、何を言う」
「僕がバチカン本部でなにが一番嫌だったか教えて差し上げようか」
はぁ…とため息をつくリンク。
僕は額を押さえて言う。
「ぶりぶりした服を何百着も着ては脱いで、着ては脱いで、しまいには腹が減れば菓子ばかり…そうさ!長官との面接という時間が一番嫌いだったんですよ」
「は?」
「悪魔の如く、ふりっふりした服を嫌がる僕に着せ、写真を撮っては着替え、お腹が空けばホールケーキが出て来て……僕は…それでこの男が嫌いなんだ」
「そっちの鴉もか」
「それは別。」
そう、僕は白衣の人が大嫌いで、長官や鴉の人達は比較的好きだった。
すべてを知って…ショックを受けた。けど…長官が主犯だと解っても僕はどうでも良かった。
その頃の僕にとって、リンクは長官より存在が大きかったから。
「どうせ…また変態行為をしたいだけだ」
「千代、私は愛でたいだけだ」
「愛でたいが聞いて呆れますよ」
「…じゃぁそれは」
「神田との間じゃ、自分に子供は預からせてもらえないだろうって考えだろうね」
くだらねぇと吐き捨てる。
知っている。
本当は…長官は誰よりも優しい事を。ただ、仕事が真面目過ぎて公私混同をしないと言うのがあまりにもきちんとし過ぎて残酷な人に見られるだけと。
その言葉で済まされるわけはない、僕だって分かってても許せる訳じゃない。
「長官、いい加減仕事もやめてのんびり料理クラブでも開いたらどうですか?」
「そうだな…千代…通ってくれるか?」
「嫌、絶対」
「相変わらず、頑固で扱い難い子供だね…」
ドーモと言うと苦笑された。
けど実際、そんな生易しい事だけではない、あっちに行けば状況が物を言う。状況が変われば…僕と同じ目に合うに決まってる。
気が抜けない…
「千代、本当に産む気は…」
「例え子供が出来ても、長官に見てもらう気はないですよ」
「…やはり…そうか」
そう言いリンクと部屋を出ていく。そうして…話す嵌めになってしまう。
僕は視線を反らした。
「まだ許せないんだ……リンクを…アイツを許せないんだ…」
「今、許さなくても良いだろ」
「…」
「それに罪悪感を抱くなら、さっさと許してやりゃ良いだろ」
「…簡単に言ってくれるな…」
苦笑した。
神田…餌をくれたのがリンクだったかもしれない。だから…気を許していたのかもしれない。
けどな…あれは…幼かった自分には堪えた。
寝ている僕の傍でコソコソ話していたのは長官とリンク。
リンクは僕を操作するために近づけたと…知った。
僕は利かない子供だったから。
ギュッと抱きしめられた。
「神田…?」
「今更お前が苦しむ事なんてねぇよ」
「…そうだな」
そっと腕を掴み神田に身を委ねる。
思い出させてくれる。
自分が今何処に居るのか…今…自分は一人じゃないと…思い出させてくれる人が傍に居ると…思い出す。
「神田…僕は……その…お、お前の子なら欲しいんだからな!勘違いするなよ!」
不器用な私を許してくれる。
ごめんね…
こんな僕で…
けど…愛しくてやまないんだ。
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