drylove

今さら
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「……貴様が連れてくるとは予想していなかったヨ」





「すみません…」





涅の軽蔑したような口調に俯き、つい謝罪を口にしてしまった。
腕の中に居る愛しい君は、無表情にうなだれているだけ、彼女を救えるのは彼、涅だけだと知っている。




「その謝罪は誰に、言っているんだネ?私カ?それとも……まぁ良いさっさと入れてやレ私は準備があるんダ」






恋次の戸惑いに気付いたのか、適当に流し命じた。
それは屈辱とも言えることだ。






「糞ッ……」





羽を洗い、血を拭き、抜けた羽や白くなった羽を抜き取り、最終的には、ホルマリンに戻す。






呆然と立ち尽くしている暇も無く地下に走り、寝台に乗せる。


自分に名無しさんをよっ掛からせ、座らせるように乗せ、白くなった羽を抜きブラシをかける。





プチッ




「アイ゙ァッ……やだ…」




「俺の背中を引っ掻け」





意識が朦朧としている中での激痛だ。
それも、一度や二度じゃない。
麻酔を打てば羽が戻ってしまい打てない。悲鳴と全身の痛みは聞いている方が精神をやられる。



黒く、尖った爪。
鉛の様に固い。




ブラシをかけてやれば荒い呼吸をする。






それの繰り返し。






羽を一つ抜く度、爪が恋次の背中にめり込む。




「も…やっやめて!!恋次ッ……」


「我慢してくれ…」







ふさふさと、暴れる様に痙攣している羽根を動かすが、恋次はがっちり掴み白い羽を一つ一つ丁寧に取る

痛い痛いと、やめてやめて、と泣き叫ぶ彼女。
自分のせいで泣き叫ぶ彼女、これ以上に辛いことはあるだろうか。






「グァッッ!!」



「ッく」









こうして三時間かけて、手入れをする。
羽根はデリケートだから。
何度も何度もブラシをして絡みを解いて、汚れを落とす。
お湯をかけてタオルで拭き取る。





その頃には、疲れ果て気を失っていた名無しさん。





綺麗な死覇装に着せ、顔を拭き髪の毛を結ってやればやっと落ち着いた姿になる。



痛む肩や、背中を気にせず、名無しさんにキスをしてホルマリンにつける。






「もう、此処には戻させねぇって決めてたんだけどな……ごめんな」





ガチャン



きっちり蓋を閉め何十にもなっている鍵を閉めると作動する機械。恋次は少し懐かしい音に酔いしれながら自分の愚かさに、自己嫌悪に陥る。










「ご苦労だったね、もう君には用はナイ」



「お願いします…」






そう言い瞬歩で立ち去った恋次。



残ったのは涅と名無しさん。そっと機械の点検をしながら、名無しさんの水槽に手を触れる。






「馬鹿だネ……全く」













人間を好きになってしまった。けどね、烏の私は何時も怖い顔をされつづけたの。

けど私が車に引かれ死んだ時悲しんでくれたの。




それで、決めた。


生まれ変わったら人間になろうって、あの人と同じ人間になろうって思ったんだ。









そしたら、世界が変わると思ったんだ。









馬鹿な嫌われ烏の話し。







人間にはなれなかったけど死神になれた。人の形をしている。私はそれだけで嬉しかった。
私が私の人の形をしているのが―…





そんな中私は此処で存在は難しいと告げられ、私は内臓の調節をされた。


そうこうしているうちに私は涅に渡され、微調整をされた。

けど、私はその時には14時間という時間しか呼吸をしていられなかった。






そして、出会った。





また、私は彼の為に私は全てを捨てた。彼なら私が私の姿をしていなくても私だと気付いてくれる。そんな気がしたからだ。






「烏風情が馬鹿だヨ…」
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