drylove
□無感情
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「名無しさん隊長が!?」
目覚めは最悪。女が先に出ていく事なんかあっただろうか。
イヅルに聞けば流魂街勤務だとか言い、普通有り得ないはずだ。
代理といえど名無しさんは、隊長だ。恋次も副隊長になってからは一度も無い
急な任命といい昨夜といい名無しさんという人物を奇妙だと思った。
「ねぇ、最近二番隊の先代からある装置が壊れたって聞いたんだけど何だろうね、阿散井くん」
「さぁな…」
ただ、もう帰ってこないんじゃないかと思った
らしくないのは重々承知していた。自分が一人の女に執着するなんて。
イヅルはどこかで見た事あるようなお握りを食べていた
「それ…」
「名無しさん隊長が作ってくれたのだよ、いびつなんだけど一生懸命作ったんだなぁって感じがするよね」
「あぁ……」
「それに美味しいんだよ♪」
あまりに美味しそうに食べるものだから何故だか腹がたって、むしゃむしゃ頬張る。
喉つまりしたのかイヅルの飲みかけのお茶を飲む
それを見てイヅルは、溜め息をつく。
「名無しさん隊長も……大変だなぁ」
「んだよ」
「それと、阿散井君は何故だか今日から三番隊には立入禁止みたいだよ」
「へー」
お茶を啜りながら積み重なる書類を見る恋次
「名無しさん隊長ってどんな奴なんだ?」
「うん…何事も一生懸命で先々の事を考えている人だね、僕から見たら大人の人みたいかな」
誰かに似ている。
イヅルがぽつりと呟く
「隊長の中でも1番優しい気がするな」
えへへっと笑いながら話すイヅルを殴り、睨む
「アイツは、俺が落とす」
「…うん、知ってる」
お茶を置き恋次は、すたこらと去ろうとした時イヅルが問い掛ける
「阿散井君!名無しさん隊長の事考えながら他の女の人の所行かないでね?」
「…なんでだよ」
「だって、それって本当に思ってないって事でしょ?」
それから、イヅルの言葉が気になりながら隊舎に向かった。
着くと、綺麗な着物を着た人が隊首室に入っていこうとしていた、こっちに気付いたのか頭を少し下げながら入って行った。
「理吉、今の人誰だ?隊長の知り合いか?」
「あ、恋次さん!隊長が御呼び立てしたみたいです」
どこかで見たような女の人を気にかけながらも自分の執務にを勤めた。何故だか三番隊からの書類が多く、しかもめんどくさい内容の物ばかりだった。
「名無しさん、名無しさん………阿散井名無しさん」
馬鹿な発言と思いながらもひっかかるものがあった。
何時からか寝てしまっていた。
『自惚れすぎ、あんた何様』
「テメェ、何だよその口の聞き方」
『だから、無理なもんは無理なの。こっちは普通職務に新商品開発、実験、研究をしているの。解る?頭弱そうだけど』
「気にくわねぇ」
『帰って、邪魔よ』
「へぃへぃ帰りますよ、可愛いげの無い女………」
『生憎、愛想振り撒くのは趣味じゃないんでね』
んだよ、糞!女の癖生意気言いやがって
『刀は置いて行きな、三日ぐらい副隊長様は浅打ちで平気よね?』
知っている。この厭味ったらしい口調と、わかりにくい優しさ。
俺はそいつに惚れて後を追って歩いていた。
やっと両思いになったかと思えばてんやわんやな、日々。
そう、アイツは………
「……名無しさん…………」
俺が愛した、俺が手にした唯一の女。
俺が俺の妻にしたいと願った女。
神村名無しさん、ただ一人。
目覚めはまたしても最悪。
恋次は頭を掻き机に怒りをぶつけた。
自分に怒り、哀れさに嫌と言うほど自己嫌悪に陥た
最悪を繰り返してしまった。
「クソッ」
二番隊の装置が壊れた。あれは、十二番隊が二番隊に預けた装置だった。
名無しさんを縛る装置。
幾度もその装置を壊そうと何度も何度も思った。
そうすれば名無しさんを自由に出来ると思ったら。
が、実際は違った。
名無しさんの体質は此処に合わず拒絶反応を起こすそうだ、だから名無しさんの体質に合わせた目に見えない気泡が名無しさんの周りを渦巻き拒絶反応を防いでいた。
それが壊れた。
すぐに緊急召集がかかった。