drylove

無意識
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こちらに来て一ヶ月が経った





名無しさんは、忙しく隊首室で筆を動かしていた。


「隊長、阿散井副隊長がお見えです。」

「悪いけど、イヅル!用件を聞いておいてくれ」






そう言うとイヅルは、下がる。
名無しさんは、溜め息をつく。


此何日か、六番隊からの書類を届けに来るのは厭味かというぐらい阿散井が割合を占めている。



毎度毎度、イヅルに用件を聞けどたいした話しではない。

六番隊はそんなに暇なのか?と思い書類を増やしてやったがあまり効果は無かった。







そして最近異常なのは阿散井だけでは無いと気付く












「失礼します、松本副隊長は……」



「はい、あたしよ♪」



「書類の訂正を…」



「あー本当だ、あちゃーすみません、神村隊長」












また、私を忘れている。
余り接触の無い人から私の『認識』が難しくなっている。





「神村隊長、じゃない、名無しさん、でしょ?」


「?……あ…ぁ…私今なんて?」


「ん?名無しさん〜って呼んで抱き着いていたじゃん」


「ごめん……名無しさん…ごめんね…」








色んな人が少しずつ、少しずつ……
あいつも私を忘れ元に戻る


そして私は孤独になるの……誰も居ない私だけ






目をつむれば、一人








そう、私はいらないモノだから。





日が沈み月が上る時刻、空に雲一つ無いが光は現れない。




「今日は朽木隊長は……」




遅くなるので先帰れと言われていた。





月の満ち間では平気なのにこの日新月の日だけは苦手、というより身体が弱るようだった



名無しさんは仮眠室に行こうとしたがさっき皆が帰ったばかりで鍵がかけられている筈だ






椅子からズルッと落ち背中を撃ったが熱で熱さが倍増した気分だった。


床は冷たくて身体を冷やすには調度良かった



太陽が昇までの我慢だと自分に言い聞かせる



「ハァハァ……」





だるく動けない、ぺたぺたと身体を引きずり入口に向かうがいきなりの頭痛に気を失った





「ハァハァ…れん…じッァ……」






喉が焼けるように熱い
身体中、寒気立ち震える名無しさん

その時、詰所の戸が開く。と、同時に声が響く




「神村隊長…いねぇよな?」






シーンとする部屋を背に向けると、隊首室から何か物音がする。


誰かの声が聞こえると想い気や戸が開く

それは恋次を捕らえ肩を掴む




「恋次!今日はダメなんだ!新月は、ダメなんだ!頼む、助けてくれ!新月は、俺、俺…!人助けだと思って、な?」




「紫紅、落ち着け」





「新月は、危ないんだよ!名無しさんが!」








紫紅の言葉に部屋に急ぐ。
案の定と言う所だろう、ぐったり床に寝そべる名無しさん。


恋次は、仮眠室に名無しさんをそっと運ぶ。身体の割に軽く眉間に皺が寄った。


死覇装を脱がせ薄着にし、毛布やら布団を沢山かける。
水を汲み、名無しさんを起こす




「水分とらねぇと…」



「んん……」



ぐったりしている名無しさん、紫紅は、気付かないが恋次は、さっきまで女の所に居たのか香水の匂いがした。




掠れた声で何かを言う。




「いら…い………かえ…て」




「意地張んな!」



恋次は、溜め息をつき名無しさんを起こし口移しをする。
名無しさんは、涙を流す。


抵抗も出来ずに起用に慣れているのか、舌で水を無理矢理飲ませる。




何度も








何度も










何度も。コップの水が無くなる間で飲ませる
その度名無しさんは、涙を流し咳き込む




「や……めて…」




「……水取り替えてくっから黙ってろ」





恋次の袴の裾をそっと掴む


「早…く………ね」






「っ!あぁ」





名無しさんは、そっと手を離す。
泣きながら笑う名無しさんに何とも言えない歯痒さを感じた。

水を汲みながらボーっとしていた。




「んなに…俺が嫌かよ…」





何がショックってキスしてあんなに泣かれたのは初めてだった。
痛々しい笑顔を見ていられない。





「くそっ」

















「はぃ、くち……き…たいちょ」



「新月だったな、今日は……すまぬ」









朽木隊長の声に苛々が増した。



あれは俺の獲物だ…触るな、近寄るな。











「ふぇっヒック……一緒に居ると…………つらい」










白哉は、俯いた。
恋次が名無しさんの事を気にかけるようになったのは良い事だと思ったが、逆のようだった



「恋次には悪気は無い…」


何故自分は恋次を庇っているのか不思議に想いながらも名無しさんの涙を止める事は叶わなかった


「はぃ……でも私…妻だったから…………どうしても…意識…しちゃう」




呼吸を乱しながら話す名無しさんに白哉はそっと額に手を当てる

「恋次は、出入り禁止にする。それで良いか?」

「は…い……あり…がとう…ます」



二人の会話は、よく意味が解らなかったが目の前の光景は無性に腹が立った

熱は下がらず、今が夜の10時。
これからどんどん熱が上がることが予想された。





「大丈夫……も……すぐ………くち…移しでも…のめ…なくなる……」


白哉の手を握り苦しみながらも笑う名無しさん

そこに恋次が来る、白哉の後ろに座る。


「っ……水取り替えて来たぞ」



「……おか…ぇ……り」



「あぁ」



「少し寝ろ…」




名無しさんの手に段々力が無くなる
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