drylove
□紅い色
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「お前誰だ?」
朝起きて来た名無しさんに言う恋次。名無しさんは無言で歯を磨く。
微妙な空気が流れる中、名無しさんはうがいをして口を拭きスタスタと茶の間に行く
「ご飯………まだ?」
「はいはーい♪名無しさんはたーくさん食べてくださいねぇ♪」
喜助の言葉に名無しさんは目をキラキラさせぱくぱく食べる
黙々と食べる名無しさんにテッサイと喜助は胸を撫で下ろした
恋次が顔を出し名無しさんの隣に座る
ちらっと名無しさんを見るが違和感しかわかなかった。
「テッサイ、おかわり」
「はい、どうぞ」
名無しさんはまたこんもり盛られてぱくぱく食べる
「名無しさん、今日は阿散井サンと買い物に行ってください」
「…解った…食べ終わったら直ぐ行くわ」
名無しさんは、記憶が無くなる人には名前を名乗らない
だから阿散井には名乗らないのだ。
「醤油とって、阿散井」
「ん、」
それを見てジンタと雨はニヤニヤしていた。
名無しさんが食べ終わるときちんと箸を揃え手を合わせてご馳走様でしたと言い部屋に戻って行く
「阿散井さん、貴方今、恋人とかいるんですか?」
「居ないっすよ、そんな奴」
手軽な女なら沢山いるが恋人では無い
女に不自由したことは無いが長くて一ヶ月くらいだった
喜助は扇子を口元に当ててニヤリと笑う
「貴方が名無しさんの証明になってくれたら…」
聞こえないように呟く喜助
着替えて戻って来た名無しさん。
あっさりとしたブラウスに膝下迄のスカートを着ている
「それじゃこれがメモです。それとお金、無駄遣いはだめですからね?」
「はーい、行ってきます」
名無しさんが小さな鞄を持ち玄関に向かう
靴を履き恋次を待たぬまま歩いていく
日傘を射して名無しさんは目的地迄歩く