曼珠沙華


□満月の夜に…
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「大吉だわ、っふふ」

「私もだよ」

「嘘っ!見せて!」

「やだ」

「みーせーてぇ!」

「やだ、なら千代も見せて」

「や、やだ」

「ふふっならだーめ」

「朔兄ちゃんっねぇねぇっ!」






甘えた声で話す。
嘘だ。
死ぬ訳ない。

死ぬと解っていて笑えるなんて…そんな…
千代は…






「私凶だった…っ」


「ふふ、私は本当に大吉だったんだよ?ほら」

「うっそーっ」

「交換してあげるから泣かないで」

「うぅっ…朔兄ちゃん…飴…」


「はいはい買ってあげるから、っと。泣かないで、私のお姫様」



抱き上げ照れたように笑顔に変わる千代。


「朔兄ちゃん大好きっ!」








殺人衝動は朔ちゃんが教え押さえているんだ。
満足出来るだけわがままを言って遊んで自由にさせてあげる。
それは千代らしく千代で居させて…


なら、俺が見てきたのは…
誰でも見ていた



偽物。










「ねぇ、朔兄ちゃん。」

「ん?」

「朔兄ちゃんが先に死んだら許さないからね」

「死ねないよ、死んだら千代きっと笑えなくなるでしょ?人ばかり殺して余命より早く死んじゃいそうだもんねぇ」

「…やりそう……」

「朔兄ちゃんにはなんでも解るんですよ〜」

「…やだ、どうしよう…背中洗い忘れたのも?」


知るかよ。


「知ってるよ」



知ってんのかよ!



「うそーっ」


嘘だよ、絶対。



「背中は私が洗ってたからね」

「そうなんだよ…はぁ…今日は洗ってね?絶対だよ!」

「解ってるよ」



クスクス笑いながら抱っこしてくるくる回る。
俺がしたみたいに。
最後にはぎゅっと抱きしめる。


「太ったかな?」

「痩せすぎだよ」



確かに軽すぎた。


「秀麗の影響?」

「大丈夫、秀麗は少しずつ元に戻ってるから」

「そう、良かったね」

「うんっ、あーあー劉輝と結婚早くしないかなぁ」

「今はまだ官吏のが良いよ」

「知ってるよ、それはね。早く子供がみたい!」

「おばあちゃんみたいね」

「良いねっ!おばあちゃんっ!朔兄ちゃんはおじいちゃんだね」





クスクス笑う二人。














大人になっただけの子供。










綺麗に幼い笑顔を見せていた。

幸せそうに。




女の子の笑顔だった。




知らない笑顔に戸惑った。
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