The girl stared at the boy.
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ゆっくり早く流れる時間。
思い出は増えて…二人の時間も増えた。
手を繋いで…好きだよ…なんて言い合えて…何も言わなくても貴方は僕を理解してくれる。
子供の頃からずっと一緒に居たような…そんな感覚になる。
もう…考えられないんだ。
神田が傍に居ない時間、生活、人生。地球は回るのが当たり前の様に、神田が居て当たり前なんだ。居ないほうが違和感を覚える位…
君もそうだと良いな。
この気持ちは伝えるには出来る表現が少な過ぎる。
そう感じるのは…僕の変化があったから。
ルリベル長官が最近週四で来てそわそわしている。
そわそわしていると言えば、神田は重症だ。
Jr.もリナリーも瞬華も煩い。
今日は…久しぶりに教会に来ていた。
勿論…金魚の糞…いや神田も一緒だ。
「二人とも元気かなぁ…」
「さぁな」
「…あのさ、嘘でも元気だろ?とか言えないの?君は?」
「…元気じゃねぇの?」
「……」
今日は二人にに会いに来た。
どれだけ大きくなったか楽しみだ。
あの頃初めてばれた、私が女だと。
けど…それも運命だったのかもしれない。
コートをギュッと握る。
と、か…ユウが腕を突く。それを見て小さく笑いながらそっとユウの腕に掴まる。
平然としているこの男に散々酷いことをしてたあの頃…けど…あの頃から好きだったのかもしれない。
ソレを受け入れられる自分が居る。
そっと教会のドアを開ける。
あの頃から変わらない。
「あら?お客様?……っ!?」
急いでシスターの口を神田と塞ぐ。
外に連れ出し、やっと離す。
クリーム色の髪の毛…あの頃と違うのは綺麗に隠されている事。
胸元に輝く十字。
「久しぶり、アリア」
「っ千代っ!千代っ!」
飛び付こうとするアリアをユウが止めてくれる。むすっとしながらもギュッと手を握ってユウの足を踏んでいた。
「久しぶりっ元気にしてましたの!?はぁ…あ、そうだ!あの糞ガキとアイに会って行きなさい」
ここ数年でこんなにも人は変わるのかと苦笑していた。相変わらずユウはアリアが嫌なのかムスっとしてそっぽを向いてる。
「あぁ、勿論…?アリア、君…結婚したのかい?」
左手には少しばかり趣味の悪いと言っては失礼窮まりないが指輪がはまっていた。
そっと撫でて…嬉しそうに一瞬頬を染めたかと思えば、呆れた顔でごまかす。
「…ア、アレックスよ……けっこ…ん…するの」
「なんだ、僕たちのが先だったのか」
「え!?」
そっとユウの手袋を脱がせ見せる。
あからさまに嫌そうなユウを無視して…
「け、け、け、結婚んんんんん!?この堅物と?この女男と」
「男女ね」
「そこ、否定しろ」
とボケているとがしっと肩を捕まれた。
「ホントに結婚!?冗談じゃないんですの!?」
そう言い僕とユウを凄む。
「ま、まぁな…」
「あぁ…」
「いつ!挙式は!??まさかもう!?」
「挙式は…しないんだ」
「えぇ!?」
「ってコイツが言ってきかねぇんだよ」
だって恥ずかしいじゃないか。
今だ僕を男だと思ってる奴も居るんだ…
白無垢やウエディングドレスなんて着たら…笑われるだろ。
と思っていたら、アリアがムッと睨む。かと思えばため息をついて苦笑する。
「そう、貴女が誰かのものになるなんて不思議な感じね」
「…そうだな…ぼ…私もそうだ」
「此処に来た時なんて女っ垂らしで、無口で、性格悪悪で、シスターもマザーも手がつけられなかったのに……」
「それを言ったら君もだろう?我が儘で、食事となればあーだこーだ言って、しまいには脱水症状で倒れたじゃないか」
「あら、貴女ほどではないわ、皆を一番困らせたのも一番喜ばせたのも…貴女よ…そんなお転婆娘が結婚だなんて…シスター達も聞いたら驚くわ…きっとね」
アリアはミラと同じぐらい一緒に居た。
だから…互いに何度も喧嘩した。時には殴り合った。
その度にシスターを泣かせ、シスターを怒らせもした。僕らは反省なんかしなかった。
アリアは貴族出身で、僕はスラム出身。元々育ちが違い過ぎて最初は馬が合わなかった。
互いに嫌い、互いに避け、朝礼会で顔を合わせるだけで睨み合い、悪口を言っていた。
それでもあの頃の僕には、自分が怖くて何処か自重していて、それがアリアには気に喰わなかった。
アレックスが来てからそれは一変した。
彼は普通の家庭で普通の子供だった。ただ、不幸に巻き込まれ此処に越さざる得られなかった。
それだけ。
彼はそういう風にしか物事を捕らえていなかった。
アリアも僕も此処に居なければならない事を「不幸」だと思っていた。ましてや世間様からは「醜い」と思われていただろう。
僕はいつの間にかそれを毛嫌いして、アリアは自分は違うと言わんばかりに反発していた。
それを歳の違わないアレックスは
「僕は此処に来れて良かったよ、兄弟がいっきにこんなにも増えたんだからね」
そう言って僕とアリアの頬にキスをした。
それが何かのスイッチを押したかの様に僕とアリアの緊張を解いた。
ホッとして…安心して…力が抜け……此処で強がる必要は無いんだ。そう思えたから。
アレックスは最初に感じていた人とは違うとすぐに気づいたけど僕達はそれでもいがみ合う事は無かった。
「姉妹」なんだから。
そう言って微笑む日が増えていた。
それは本当に過去の自分には想像のつかない時間を過ごしていたと思う。
「アレックスはね…千代にあれでも会って変わったんだって」
「へぇ〜」
「本当は千代のお兄さんになりたくて必死に勉強したんだけど…いつの間にか千代に学ばされていたって」
「そりゃ無理だよ…僕とアレックスじゃ色々違うからな」
「そうね…けど…アレックスは平和ボケ人間代表みたいな者ですからね」
「そうだな」
そう言い合ながら笑って居ると、中から飛び出て来る。
「お兄ちゃんのバカッ!!!!」
「あ、アイ!そんなに怒るなよ…ほ、ほらお兄ちゃんがアイスをだな…」
「嫌い…!お兄ちゃんなんかもう…大っ嫌い!……ぁ!」
レインとアイらしき二人がこっちに気づく。
神田が「おい」と僕に顎で言うとアリアは顔を鬼にして怒鳴る。
「こら!レイン!!!アイを泣かしてんじゃありません!!!」
「う、うるさいっ…アイ…なんでそんな怒っているんだよ…」
そっとアイの肩を触ろうとすると顔を真っ赤にして掃う。
「お兄ちゃん…私…アイスじゃなくて……お兄ちゃんなんか嫌いなの!!!!」
「アイ!!言って良いことと悪いことがあるんですよ!!」
「きら…い……っ」
アイの言葉の違和感にはすぐ気づいた。僕もそうして気をつけて話していたから。だから言い方がきつくなっていしまう。
神田は罪悪感で沈み込んでいるアイに説教をしているアリアを引っ張り、アイの前に座り込み頭を撫でいた。
「久しぶりだな」
「ゆー?」
「あぁ、元気してたか?」
「うっふっうえぇええええええ」
凌で馴れてるのかアイを抱き上げ、宥めていた。僕もレインに挨拶をするとこっちも男泣きをしていて苦笑しながら笑った。
アリアは先に入ってるからねと言い居なくなった。仕方ないかと思い玄関先に座る神田を見て僕はレインの頭をそっと撫でた。
「ユウ、僕達少し買い出し行ってくる」
「あぁ、気をつけろ」
「ありがと」
レインと手を繋ぎ歩く。
離して聞いた方が良いと思ったから。
レインはえっくえっぐと言い泣いている。
「千代っ俺っどうしたらっ」
「レイン、君がショックを受ける理由が解らないな」
そう言いながら何処かで見たレストランに入る。便利なコートに少し感謝をして個室に案内される。
レインは僕の言葉が信じられないのか驚いている。
「僕はね、非はレインにあるとおもうよ」
「え?っだって俺は」
「一つ誤解を解こう、アイが嫌いだと言ったのは『お兄ちゃん』だよ」
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