The girl stared at the boy.


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「あ、奇遇ですね神田も帰りですか?」




多分始まりは彼。
そして墓穴を掘ったのは私。

アレン…久しぶりに会っても憎たらしいわ。

「あぁ、話し掛けんなモヤシ」


「モヤシッふふっ」

私は笑ってしまった。
気付いたのかアレンは私を指を指して驚く。
一通りお決まりのリアクションをしたら、神田の隣、つまり私の左斜め向かえに座る。




「貴女は、また、千代のストーカーですか?やれやれ」

「なっアレンがでしょう!?私は千代に会いたくて来たのよ!」

「プッ千代、千代言ってるから、恋人出来ないんですよ」

「う、うるさい!千代が、居ればいーのよ!」

「千代に恋人が出来たらどうするんですか?」

「え、そっそんなの決まってるじゃない!……………………………どうしよう…」




アレンは爆笑して私を馬鹿にする。
だいたいそんな事急に言われたら…ねぇ?





「千代に恋人が出来たら…私、どうしよう!」


「知りませんよ、溺愛しすぎなんですよ、千代もカノンも…」







アレンに言われた一言が胸に刺さった。


だって私達、普通の友達を知らないんだもん。

千代も姉さんも私も、ずっと友達なんて居なかったから。



「私、きっと千代に恋人が出来て、子供が出来たら、千代を千代として見れないわ…」




私達は、産まれて来た事を後悔した。千代が、子供を産んだら私は千代を軽蔑してしまう。
だってその行為はきっとその子供にも私達と同じ思いをさせてしまうわ。




「どうしてですか?」




アレンが、珍しく私に優しく話しかけた。



綺麗に笑う彼。
いつもは千代にしか向けなかった。




「僕は、千代を祝いますよ、だって千代が幸せになれたって事ですから」






嗚呼、そうよね。


アレンの考え方、私は凄いと思うわ。


私は阿呆みたいにアレン、凄い!という顔をしていると思う。



私達は気付いていなかった、失言に。
神田がこの一言を言うまで。







「アイツ、女だったのか」







ヤベッと私とアレンは顔を見合わせた。
神田が居ることをすっかり忘れていた。お互い憎き相手に気を取られていた。



―どうしよう!アレン


―し、しりませんよ!


―モヤシでしょう!しっかりしなさいよ


―意味わかりませんよ!






神田が目で会話する私達を見る。


「違うわよ、千代は私の彼氏よ?あれは言葉のあやよ、解る?」



「まどろっこしい会話だな」



「単に神田が馬鹿なだけでしょう?まどろっこしいなんて、カノンじゃないんですから」





何とかごまかせた。
内心安堵して、私達はまた下らない話しで喧嘩をしていた。


神田は意外に聞いているんだ、私達の話し。



「ちょっと!神田!それ私が頼んだお茶よ!」


「テメーは後から頼んだだろ?後から貰え」


「レディーファーストでしょう!そこわ!」





だけど、やっぱり神田は好きになれない。
アレンもだけど。

神田はきっと千代に影響を齎す。
どんな風にかは、解らないがきっと良くも悪くも千代を変えるだろう。



「カノンは、久しぶりにでも何も変わってませんね」




「あ、え?」

急にアレンに話しを振られ驚いた。
というか聞いてなかった。


神田ユウは危険よ姉さん…




「また、千代の事考えていたんですか?やれやれですねまったく」



「なによ、アレンに迷惑かけてないわ!」



「はいはい、千代どうして突然教団に?」





そうよ、どうしてだろう?
あれ程教団には興味が無いって言っていたのに……



「わからないわ………」



「変な事考えて無きゃ良いんですがね…」



「えぇ……だけど、何かあるんでしょうね…千代の興味をそそるものが」





私もアレンもため息をつき、考え込む。

教団なんて行く気は無いって言っていたのは本当。
千代は気まぐれだから、興味が無い物にはつくづく冷たくあしらう。



だけど、千代の眼はあの頃より冷たい瞳をしていた。



全てに興味が無い、諦めた瞳。









千代に助けられたあの日から、私の、私達の全ては千代の為にある。
姉さんとそう決めた。
だからどんなに肩の狭い思いをしても笑顔でいれた。




握る手に力が入る。






姉さん、姉さんは千代を妹みたいに愛して大切にしていたよね?




私も千代が大切だよ、姉さん程私は上手く出来ないけど、これだけは上手く出来るわ。
【カノン】は千代の為に存在するということ。




それだけは、いつになっても変わらないわ。
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