愛+曖昧模糊
□2.ノープランデート
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「ちょお、そこに並べや」
「なっなんだよ千代」
「お前さんも、並べゆうてんのや」
「…(坊なにしたんです?)」
「ハイ…(知るか!)」
「…(千代さんめっちゃ怒ってはりますよ!?)」
白髪の長い髪の毛を振り払い、腕を組んでいた。
頬には大きな絆創膏。
ため息をつきながら千代の前に並ぶ。
「はじめに。竜、なっさけないわ」
「はぁ!?」
突然なんだ、朝っぱらから。
「私は男前なあんたに、惚れたって言うのに今のアンタはなに?餓鬼の頃からなんっっも変わらへん。殆愛想尽かしたわ」
眠たかった頭、体、目が冷えた。
「アンタとは別れる。」
次!と言って子猫丸を叱っていた。
なに?
朝っぱらから騒々しいと思えば千代は何をそんなに…?
「それと、私。寮移るから。」
「はぇ!?」
「はぁ!?」
「えっ!?」
「私は、奥村燐が好きだから」
何をトチ狂った事を?あの青い夜の出来事を忘れたんか?
アイツは…
千代は
知っていた。
「千代!」
「燐…?あ…梨!」
「す、好きだって言ってたから…」
「ふふっ燐って意外とマメなんですね、あぁ、洗濯物乾しときましたよ」
「…あ」
「燐も疲れてはるだろうし、ね?」
君が、他の野郎に触れる。
「燐、ネクタイ…曲がってます」
君が、自分意外の男に甲斐甲斐しくする姿がこんなにも悔しいなんて思いもしなかった。
「止めや!」
千代の腕を掴むと、睨まれた。
「なんや、のこのこと…勝呂さん。触らんといてくれます?」
「あぁ?!」
「女々しい病が移るから、触らんといてって、補聴器忘れたんですか?」
「んなもん付けとらんわ、なんや女々しい病ってそもそも…」
すっと正面に向き合い彼女は指を胸に押し付ける。
「優しい竜も気張りはる竜も伴う努力をする竜も、好きです。けどねぇ、竜の努力は何れは結果になりはるもの。でも燐はそうやない。」
「何が違う言うんや、惚れて目ぇおかしなったか」
「燐は…全部受け入れて…それでも守る事を信じる事をしてくれはるの。それがどれだけ辛く苦しく、怖い事か…」
「同情か、せやったらお前も奥村をそういう目ぇで見てるんやないか」
「坊は出来はりません。やさぐれてやさぐれて、本末転倒になって終わるだけですわ」
「はぁ!?」
「燐は、芯が強いんです。女は顔や言葉や優しさより…最後にはそういう処に惚れるんですわ」
千代は解らん。
自分の家族、友人、親族を殺した男の息子を。
何でそんな風に言えるんだ?
「燐、ちえちゃん呼んではるから先に行っててくれます?私はこれを見送って来ますんで」
「あ、あぁ…千代」
「はい?」
「勝呂は間違ってねぇ」
んな…こと言うな。
千代が…ただ惚れるだけや。
品よく笑う千代。
暫く見ていなかった。
「燐、私の正義は違うんですわ…」
「千代…?」
「竜の父上は…私の初恋なんですわ」
千代と約束した
泣かない
泣けない
千代を
泣かせたのは親父だった
千代は敬愛し好いた
でも、俺は千代が好きで
好きで
約束をしたんや
「勝呂の父上は…私を娘の様によう可愛がってくれはったんですよ……そんな私を竜は…俺にしとけゆぅて、約束をくれたんですわ」
お前の大切なもの。
全て護ってやる。
「竜の正義は私の正義、私の正義は竜の正義…せやから………反した竜は私の竜じゃないんです」
千代は頷いて笑ってくれた。
―――私の竜じゃない。
あかんわ。
千代…
「千代…俺っ」
「もう、遅い」
千代は侮蔑の視線を向ける。
「アンタが言うてんのは気に入らんのや」
「なっ」
「燐がまるで人殺しをしたみたいに言い張るその目、口、声が、気に入らん…親が殺ししてたら子も同罪やと?馬鹿も休み休み言いや、そんな男と将来なんかあらへん。吐き気して考えたくもないわ」
「そんな…誰が…」
「一度は考えたアンタをもう、許すつもりは無い。もう好きにはなれへん」