愛+曖昧模糊
□3.腰に響く低い声
3ページ/3ページ
冬になって。
外が雪景色に変わる。
小さな"ソレ"が私の話し相手。
楸瑛様が寄り付く回数も減った。
「ふふ、貴方達は元気ね」
言葉さえ通じないソレは雪の中を裸足で走り回り私に見せてくれる。
春夏秋冬静かで、時間さえ解らない。
監禁?軟禁?違う。
出る意味が解らない。
私の思いさえいつの日の誰のものか解らない。
鼻歌を歌い、毛布に包まり窓の外を見つめる。
春は花見をしたらしい。
夏はかき氷を食べたらしい。
秋は焼き芋を食べたらしい。
冬は…
「寒いわね、少し」
私の思い出を奪う誰か。
私の記憶を奪う誰か。
悲しいなら作らなければ良い。
「千代」
久しぶりに呼ばれた名前に振り返る。
楸瑛様が真っ赤な花を持っていた。
冬は楸瑛様が冬の花をくださった。
明日の私へ。
今日の私は楸瑛様が愛おしかったです。