愛+曖昧模糊
□2.吐息混じりの掠れた声
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「千代」
ふらりと傍に来てふらりと去っていく。
三兄様から早急に帰るように。
まだ、帰りたくない。
何回目かの手紙を破る。
「千代?」
珍しく早く帰った楸瑛様に驚き肩がびくりと跳ね上がった。
すっと、書物を後ろに隠し微笑む。
「おかえりなさい、楸瑛様」
「うん、ただいま。出迎えに来なかったから具合でも悪いのかと心配したよ」
お世辞でも嬉しかった。
涙が出そうなぐらい。
「すみません、小説に夢中で時間がそんなに過ぎていたとは…」
苦笑いを浮かべる。
気にしなくて良いよと言われ微笑んでくれた。
三兄様。
私。
幸せです。
数秒、貴方が私だけを見ていてくれた事が嬉しくて。
後ろ姿を見て、思いは募る。