愛+曖昧模糊
□1.甘えた猫なで声
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「奥様、お薬の時間です」
「え?さっき飲んだじゃない」
「……いいぇ、まだです」
私の使用人のが苦い顔をする。
そっと置かれたお盆から薬をつまみ飲む。
苦くまずい。
「にがい…」
「旦那様、お帰りになるそうです」
「そう、その様子じゃ此処には来なさそうね」
「…何故、行かれないのですか」
相変わらず不機嫌そうな使用人。そこが好き。
「まだもう少し、楸瑛様に愛されていると勘違いしていたいの」
私が奥様になるまで。
たくさんありすぎた。
勘違いするには
十分。
優しくされすぎた。
ただ、窓の外を見つめる。
静かな夕日。
誰も寄り付かない離れはあまりに静かだった。