愛+曖昧模糊


□4.堪え切れずに笑う声
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「楸瑛様!絳攸様!あら、静蘭様まで!」




つい嬉しくなる。
お迎えをしていると三人の姿に声音が弾む。

私は人が好き。
忘れてしまうけど…話すのも会うのも嫌いじゃない。ちょっと怖いだけ。





「君を迎えに来たんだ」

「え?」



でも…私は



「忘年会だよ、邵可様のお宅で。一緒に、ね?」



嬉しくてにやけてしまい、手を伸ばすと懐から転がる日記。

慌てて拾い袖で拭く。

私は行けない。


あの使用人が居ない所には行けない。

身体がそう言っていて。
苦しくなる。



「楸瑛様、お気持ちだけにしますわ。どうぞ皆様で楽しんで来て下さい」


「それは…日記ですか?」



静蘭様に指摘されびくっとする。


「え、えぇ。書いてる最中でしたの。」

「……そうですか」

「千代、遠慮すること「私は行けませんから!!」


怒鳴ってしまい、ハッとする。
ぎゅっ日記を抱きしめ謝る。
そっと楸瑛様の頬を撫でる。




「冷えてしまって…すみません。私はお留守番していますから。どうぞ、皆様で楽しんで来て下さい」







貴方の前では、貴方の望む妻で居たいのに。


"お留守番"だなんて口に出して後悔する。
頭を下げ、見送る。




「奥様、お時間です」



薬の時間。
一分一秒違えば日常が崩れるらしい。






味覚さえおかしくなった私。


涙が止まらなかった。






「もう、だめなのかしら」






あんな態度。
嫌われてしまったかもしれない。楸瑛様の顔に泥を塗ったんだわ。
優しい楸瑛様を…っ











小さな鳥籠を出ても私は生きていられない。
自由と死はイコールで覆りはしない。




日記に書かなければ。
明日の私は笑顔で居られるのかしら?
ちゃんと、笑ってくれるのかしら?








朝が怖い。
明日が怖い。











部屋から出た世界が怖い。
 

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