愛+曖昧模糊
□3.腰に響く低い声
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知らない鼻歌を歌う。
タイトルも覚えていない鼻歌。
歌詞は朧気。
「奥様」
呼ばれて振り返る。
「ん?」
「今日は帰らないと連絡が来ました」
「ふふ、相変わらず酷いわね、マメで笑えるわ」
クスクス笑い日記を読む。
私の一日は私を理解した頃に終わる。
薬を飲み込み「にがい」と呟く。
「明日は秀麗様がお見えになるそうです」
「あら、秀麗ちゃん?久しぶりね…楽しみ」
「…奥様」
「大丈夫、寝ないでいたら間に合うわ。調度旦那様もお帰りにならないし夜更かし夜更かし」
そう言って日記を棚に戻し最初の日記を取り出す。
「奥様、やはりきちんと治療を…」
「今更遅いわ、それに…多分私は…今を望んでいたのよ?良いのよこのままで」
「……旦那様を愛していらっしゃらないのですか?」
「愛しているわ。だから愛されるのは怖いのよ」
複雑な顔をする。
「楸瑛様に報告なさったら殺しますからね」
私の居場所は今の場所が良いのよ。
「私が心配なら楸瑛様に罪悪感があるなら、私を殺せば良いわ。楸瑛様は解放されて自由になれるから、ね?」
俯き出て行ったのを見て日記を書く。
忘れてしまうから。
優しくしなくていいわ。