愛+曖昧模糊


□2.吐息混じりの掠れた声
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「絳攸様!」




秋になりました。
涼しくなった家に絳攸様が訪れて、私は庭から廊下に駆け寄る。



「千代、何してたんだ?」


「焼き芋を焼くんです」


「俺も仲間に入れてくれ」


「はいっ」



せっせと落ち葉を集める芋を埋め火を付ける。
絳攸様とあったまりながらいろんな会話をした。



「絳攸様、まだですか?」

「まだだ」

「もう良い香りがしますよ」

「まだだ」

「はぁ、お腹すきました」

「…まだだ」

「ぺこぺこ…ねぇ、絳攸様?」

「まだ、だ」

「炭になってしまいます!」

「なるか!まだ中まで火が通っていない!」

「半生が正義です」

「だめだ」

「食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい!」


そう言うとため息をついて小さいのを取り出してくれた。

半分に割るとほかほかの良い香りと黄色が綺麗だった。



「おいしそう…食べて良い?」

「どーぞ」

「わっあち…ん、おいしいっほら、絳攸様も!」


差し出すとぱくっと食べていた。

「ん、他はまだだからな」

「はぁーい、んーおいしっ」



絳攸様はたまに私と遊んで下さる。


「口につけて…子供か」

そう言いながらとってくれる。私は絳攸様にならわがままを言えた。




「また来年も焼き芋しましょうね」

「あぁ、時間があればな」

「意地悪…」





そんなことを言ってると楸瑛様が帰ってきたらしい。
静かに庭を覗き驚いていた。



「千代、ただいま」

「おかえりなさい、楸瑛様」



「絳攸と…なにを?」

「焼き芋です。一人でしようとしたら絳攸様が仲間に入れてくれと言われて一緒に」

「私が帰るの待っていてくれたら良かったのに」

「はい…すみません」



小さくため息をついて庭に下りて絳攸様と遊んでいた。

少ししたら私は部屋に戻るように言われる。
惜しまない様に微笑み、戻る。






そっと二階に上り、一冊の書簡を取り出し開く。












次生まれ変わったら




すべてを知ってすべてを愛されたい。















「奥様、薬の―…奥様!」

「大丈夫、騒がないで」















大丈夫じゃない私が大丈夫だなんて馬鹿らしい。
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