愛+曖昧模糊


□10.毒入り林檎下さい
1ページ/2ページ



解っていた。

来る訳はなかった。
諦めよう。諦めようと思うだけ、日に日に積もる気持ち。
だから、毎日毎日あの場所に行く。


千代が俺を見て困った表情をする。




俯き何度か頭を下げる。

会う度に。









「なぁ、千代」


「…忘れてる」

「は?」

「さん」

「……ハイハイ千代さん」


ふわりと笑う。


「遠征の書類預かっているだろ?」

「うん……これ…」

「配ったか?」

「今いくとこ」

「良かった、日付変更になったんだ」

「…ん、いつ?」





千代の話し方が変わった。
病院に入ってから。
昔からせかせかと喋る奴じゃなかったけどあんなに言葉に間をおいて喋らなかった。


医者に話しを聞けば一種の後遺症だと聞いた。



「テープあるから」


「助かる、俺がやるから待ってろ」

「…でも…恋次……ごはんは?」


「配ったら食いに行くからな」


「……うん…ありがとう」











ックソ。




どうすりゃ俺を見てくれんだ?


どうしたら俺を信じてくれんだ?



「煙管、買いに行くんだろ?」

「…一角さんに秘密…怒る…から」

「はぁ…解った。誰かと行くのか?」

「うん、トモダチ」















千代。
愛している。
そう解ったのに。



もう遅いのか?








まだ…まだお前に沢山沢山伝えたいんだ。


















やっと知った小さな千代の好きな物。
俺にはこれくらいしか出来なくて。
彼女の為だけ思って手紙を書いた。


君に届くように。

君に伝わるように。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ