愛+曖昧模糊


□9.無色透明
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私は、暫くして仕事に復帰した。
心配してくれていた人達。


ただ


なんの感情ももてなかった。





「千代っ!」





息せき切ったように来た彼に目をやると"副隊長"だと解り返事をして頭を下げた。
肩をつかまれ悲しげな顔をする。


「千代、俺っ…ずっと…言いたかったんだ」


そう言い、絞り出した声。



「お前が…好きなんだよ」

















優しい嘘はもういらない。












「はい、ありがとうございます」















貴方は大層驚いた様に目を見開き、ずるりと手を離した。






愛してくれた記憶はない。



愛された記憶は…貴方以外。



もう騙されない。
もう騙されてあげない。


もう引っ掛からない。
もう引っ掛かってあげない。











「おれ…の、せい?」







「いえ、そのような事は全くありません」










私はもう


貴方を愛せないみたいだ。


心が
身体が


疲れている。



「…今日、あの場所で待ってる」




甘い蜂蜜の様な罠。

引っ掛からないようにするにはあまりにも簡単だった。


立ち去ると手足が冷たく冷え、立って居られなくなる。

恋次が傍に来て手を掴み温めてくれる。








「千代…さん?」






「恋次…心は無くしても…絶対に壊れても破片は残るの。その破片が心になるの」



「……なんで…俺じゃダメなんだよ」







恋次の胸に人差し指を突き付ける。






「心が探してるから」







「あんたもバカだけど俺もバカだな」









ほんのり温まりぴくぴくと動く指先。


拒絶して求める




強く

強く


苦しく。
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