愛+曖昧模糊
□7.一時の発熱と残る微熱
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雪がふり、薄着だった私は風邪をひいた。
だけど…可愛い後輩に迷惑はかけられなく震える身体を立たせて向かう、そんな日々が続いていた。
隊舎の雰囲気が違っていた。
恋次はいつも通りで数人はいつも通りだった。
「────────────────…‥檜佐木副隊長が言ってたんですが、本当ですか?」
一人の女の子が軽蔑した表情で言う。
「違います。」
意味の無い否定を口にする。
あぁ、修兵も私に死んで欲しいんだね。
いつから…私が二股なんかした?
私は二人ともに恋愛感情はない。そう言ってる。二人に。
私が頼るからか。
だから二人に迷惑かかるんだ。
大切な人達にかけたんだ、迷惑。
汚い私に罵倒はあまりにも真実で、お似合いだった。
檜佐木副隊長が平然と声をかける度に胸が締め付けられる。
吐き出せない感情、汚い感情。
醜い感情。
心が少しずつ。
少しずつ。
悲鳴をあげていた。
「汚い」「淫乱」「最低」「醜い」
連なる言葉はチャリンチャリンと傷口から入ってくる。
恋次とも一角さんとも口を聞いていないのに、噂は帯びれ背鰭ついて私に事実として不満を吐き出される。
長く好きだった髪の毛は掴まれ
引っ張られ
短く切られた。
ハラハラと落ちた髪の毛。
詰め込んでいた汚い感情が
シャボン玉みたいに
静かに弾けて
無かった様に消えた。
小さな水滴を残して。
また、悪魔が囁く。
「なんで、仕返ししない?」
私は教えてあげるの。
「彼女達が正しいから」
貴方はまた「そうか」と呟いた。
トクントクンと心臓が泣いていた。
頬に伝った赤い何か。
汚い赤黒い液体。
「お願いだからしんでよぉ…」
涙声。
うん、わかった。
「しゅーちゅんを奪わないで…」
奪えないよ。
「貴女が死なないから…っ」
しぶとく動く私の心臓。
止まってしまえば楽なのに。
私の声は誰にも届かない。言葉になっていないと気づいたのはもう少し先。
傷口の熱は身体より温かくて。
冷たくて、寒かった。