愛+曖昧模糊


□1.焦がれ、浮かれ、墜とされる
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会いたい気持ちで私は頭がおかしくなりそう。
貴方に会う口実ばかり考えてる。でも、貴方を見ると…気持ちが静まる。



貴方は私を見ると気軽に頭を撫でて「お疲れさん」と笑うから。

だから、浮かれてしまう。
期待してしまう。




胸が苦しい。





だから、私は貴方の香りに絆される。



泥沼の偽りの愛に埋もれていくの。






決まりのホテル。
決まりの部屋。

決まりの笑顔。




嘘、嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘





貴方の寝顔を見て涙も出ないよ。






「…ね、修兵。私ね。夢を見たの」





夢は見るだけだから夢なんだよ。






「修兵に愛される夢。ベタだよねぇてゆーか今更?それがね、スッゴく笑えるの」



小さく笑い、修兵の頭を撫で髪の毛を梳く。




「サインくれ、って言われてハイって答えて、渡されたのが婚姻届。雑ッて怒ったら真っ赤な顔して…結婚しよ、って言われたの…嬉しくて嬉しくて……」


「…」



「今が夢なら良いのになぁ…」












どれだけ願ってもこれだけは変えられないよね。
事実は事実でしか変えられない。
思いは夢に似ていて

現実は酷く過去を責めて

過去は現実を生み出して…

事実が結果となる。


よく出来たリアル。




責める場所は無くて、事実だけがふわふわ残る。

寝付けない私は朝を待つ。




小さな和室、窓の外を眺め朝日を待つ。


「さむっ…」



冷え症な癖に外が好き。
朝日、夕日が一番好き。

いつからか吸いはじめたタバコ。
あと、あったかい緑茶。

朝を待つ私のスタイル。隣には大好きな人がすやすや寝ていて…薄着で窓の淵によっかかる。




朝を待ちながら朝を拒む。



静かな時間はフツリと切るように伝令機が鳴る。毎日毎日この時間だけは笑えた。






「おはよう…恋次」


心配してくれる可愛い後輩。



『千代……帰り家寄って下さい』


「…布団、干した?」


『はぁ…えぇ、だからゆっくり寝られるでしょ?』


「シーツ洗った?」


『洗った洗った、枕もシーツも掛け布団も、ついでに風呂場も掃除した。良いだろ?』


「ん、偉い偉い、後で鯛焼き焼いてあげる」




それより、寝ろ!と怒鳴る恋次に苦笑いをする。そっと、窓の外を見る。

冷たく"呼吸"が感じた。



「そうだね…今日も行くよ」

『早く来てください』

「鍵持ってるから良いでしょ」

『フラフラして風邪ひいたら困るのは千代だろ』

「修兵と居るのが嫌だってハッキリ言えば?へたれ」

『…嫌だって言えばアンタは会わないでくれんのかよ』

「無理」

『知ってるから早く帰れっつってんだよ』



ちょっと驚いた。


クスクス笑うと怒っていた。
涙を拭い、緑茶を飲み干しタバコを灰皿に落とし、修兵に毛布をかけ直して髪の毛をそっと梳く。


静に立ち上がる。



「恋次…今から帰る…」



恋次は馬鹿な上にへたれ。
私なんかを好きだと言うんだから。




『おう、なんか食いたいか?』


「ん、お味噌汁飲みたい」




静に部屋のお金を支払い、ホテルを出て歩く。



「今出たから、安心してよ」

『はいよ、鍵開けとくから入って来い』

「ん、わかったありがと」







恋次がなんで電話してくるかと言えば、私が好きだからと言う。
曖昧な態度とハッキリした返事をしている。

甘えてるんだと思う。


修兵に無い優しさ、修兵から欲しい優しさが恋次はくれるから。






恋次は解っていて私を傍に置きたがるから困る。
弱音を吐く唯一の人になってしまったから。




途中、立ち止まるが振り返れない。




居るかもしれない。



期待



居ないかもしれない。





今は…恋しくて悲しくて…



寒い道を走った。

恋次が待つ家に─…‥
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