SS置き場

□SSネウヤコ以外
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【主従以上知人未満】



「アイ〜!」



 銀紫色の髪の毛に陶器の如く滑らかな肌、魔を宿したような妖艶さにしかし幼さを残した無邪気な少年が羽根のように、ある人間の下に嬉しそうに舞い降りる。
 その身に鮮やかな紅さえ無ければ、まるで天使かと見間違うだろう神秘性があった。



「はい、なんでしょうかX。」



 その人間の方は明鏡止水の如し、仮面のような冷静さをその顔に貼り付かせた月のような見目麗しい女性だ。
 銀に良く映える紫を身に纏って、少年についている返り血を表情一つ変えずにさりげなく拭う。



「…良かった、合ってたねアイ。」

「…と言いますと。」

「忘れて無かった、アイの事。」



 自分の身長より高い女性の胸元にに、嬉しそうにすがりつく。
 さながら母親に甘える子供、もしくは彼女に愛撫するかのように、しかし二人を纏う雰囲気は決してそんな穏やかな物でも甘い物でも無い。
 女性は黙って少年にされるがまま、しいて言えば視線を前方から少年へと向きを変えた程度だろうか。



「何故、忘れてるなどと思ったのですか?」

「んー…なんとなく。」

「そうですか。」



 軽く肩をついて女性をあくまで優しく椅子に座らせる。
 溜め息を吐く女性にお構い無しに額同士を合わせて無邪気に笑う。



「何故、そんなに嬉しそうになさるのですか。」

「アイを忘れて無かったのが嬉しいから。」

「私を…?」



 それが何故か、心底分からないと少年の頬に手を添える。
 少年はそれを嫌がる事無く、くすぐったがるだけで寧ろ嬉しそうだ。



「うん、俺はアイを忘れたく無いから。」

「…何故。」

「うーん、なんでかな…多分、アイが好きなんだと思う。」

「…。」



 無表情なのは変わらないが、先程と違いどちらかと言えば呆然としたように少年を見つめる。
 少年はそれを見て、傷ついたかのようにシュンとなる。



「嫌だった?」

「いえ。」

「じゃあ態度で示してよ。アイは分かりづらいんだから!」



 拗ねたようにむくれる少年に、女性はやっと微かに微笑んでその頬に軽く口づけを落とした。
 

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