SS置き場
□SS集1
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【讃美歌を君に捧ぐ】
歌が聴こえる
聴いたことの無い言葉で
柔らかい旋律に乗せて
私の耳に届く
どれも聴いたこと無い
でも一つだけ知ってる
「ネウロの声だ…。」
多分、屋上で歌っているのかな…上から聴こえて来てるし…。
歌ってるなんて初めてじゃないかな?
久しぶりに新鮮な謎を食べられて嬉しいのかなー…
普段じゃこんなに機嫌が良いこと無いもんね…。
言葉の分からない歌に乗せてハミングしながらあかねちゃんのトリートメントの準備を始める。
ふとあかねちゃんの方に目を向ければ気分良さそうに揺れている。
「皆、機嫌良いね〜…」
あかねちゃんが此方を向いているみたいに反応して、ふるふると震えて答えを返してくれる。
多分笑ってるんだろうな…なんて思って、撫でる事で嬉しさを伝える。
「この歌なんだろうね〜?綺麗な歌だけど不思議な感じが…。」
【…?】
「不思議な感じしないのあかねちゃんは?」
うなづかれてしまった。
私には、なんというか…
アヤさんの歌みたいに頭に直接響くような感覚があるんだけど…。
そういえばこの子髪の毛だけなんだったっけ…。
「不思議な感じとはどんな感じだウジムシよ。」
「あれ?ネウロ上に居たんじゃ無いの?」
「いつまでも居る訳が無いだろう…。」
…そりゃそうよね。
いつまでも居たらどんだけ暇なのよ、って事になりうるし…本当だったら謎を探しに行きたいくらいなんだろうなぁ。
それにしても、あの歌なんて言う曲だったんだろう。せっかくだからもっと聴いていたかった気がするんだけど…。
「それで、不思議な感じとはなんだ?」
「私も知らないわよ。本当にただ不思議な感じがしただけなんだし。」
「…では、もう一度聴くか?」
え――
と思った時には既に歌い始めていて、先程よりも近くに感じる歌声が心地よい。
トリートメントを終えて真剣に聴きいれば、満足そうなネウロの笑顔が目に入って来る。
まるであっという間に過ぎ去った時間。
頭がぼんやりとしていてはっきりと意識が掴めない。
「何なの…この歌?」
「さあな…。」
「えっ?教えてくれないの?!」
「自分で調べろ。」
「無茶言うな!」
今は春
鳥達の愛を囁く歌声が
世に響いていた。