捧げ物
□春季午後の睡眠交流
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「…眠いの?」
「………む?」
「あー…答えんで良いわ、あんた確実に眠たがってる。」
柔らかな陽射しが事務所内に差し込んでいて、辺りはすっかり春の匂いが立ち込めている。
まぁ、ネウロは陽射しの暖かさを感じとる事は出来ないだろうからあまり関係無いんだろうけれど。
春の陽気に解放的になる人は【謎】を含んだ犯罪など犯さない事もあって、事務所もすっかりそのペースに巻き込まれたのだ。
ちなみに私はと言うとその威力に負けて、とっくに陽射しに身を委ねてソファの上で微睡んでいた。
ネウロは私の言う事が気にくわないようで、特に何か仕事をしていた訳でも無いパソコンをシャットダウンして立ち上がる。
「…別に眠い訳では無い、暇を持て余しているだけだ。」
「確かに陽射しって気持ち良いよね〜…。」
勝手に自己完結して、眠気に思考回路が停止しかけている私の上に被さるように影か落ちる。
「…奴隷が主人の話を無視するとは随分な出世では無いか弥子?」
「おぶぶぶぶ…。」
まるで私ごとソファだと言うように遠慮なく背に寝転がる…と言うかのしかかられた。
フハハハと上機嫌な笑い声が耳に入って来る。
「重いっての…」
「む…。」
「どいて〜…。」
「…。」
「ネウロー?」
反応が、無い。
どうしたのかと先に上半身を捻ってかろうじて後ろを向く、ネウロと私の間に手を差し入れて軽く持ち上げて更に残りの下半身も捻って仰向けになる。
そうして姿を確認すれば、穏やかな寝息を立てて夢の世界へ落ちてしまったネウロが其処に居た。
私の真横に顔があるんだけど、寝てると思えばどうって事………。
(いや無理無理、めっちゃ恥ずかしいですごめんなさい…じゃなくて!)
本当に私をソファ代わりにするなんてまさかとは思ったが…寝難くは無いんだろうか?
(あっ寝難い。寝難いんだ、眉間に皺寄ってる!レア!)
携帯が手元に置いてあれば間違いなく写メってる位地味にレアな表情を、まさか寝てる時に見られるなんて思って無かった。
結構長く一緒に居るけどいつも薄ら笑いを浮かべているか、何か企んでるような笑顔しかしないから尚更新鮮に感じる。