BOOK1《後編》
□三十八
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(沖田 side1)
病室のベッドで横たわる、蒼白い女名無しの寝顔をみつけ、心臓が凍りつく…………
僕の脳裏に焼き付く、包帯に包まれた女名無しの顔とがフラッシュバックする
入り口で止まったままの重い足を、ノロノロと進め側まで近付いて、女名無しの胸が静かに上下しているのが見てとれた
安堵の大きな溜息がもれ、初めて膝が笑っている事に気がついた
土方さんから女名無しとの連絡がとれなくなったと報告を受けて、弟が告げた言葉を確認するために、ここに来たのだが……
以前よりも、痩せて顔色も悪い…
もう潮時だ……
女名無しを僕から解放しなければと思っていた矢先
微笑む女名無しが過る度
君のためだと理由をつけては、嫌がる女名無しを抱くのをやめれなかった
いつかは僕に気持ちを向けてくれるかもしれないと、自分勝手な僅かな望みも虚しいだけで………
そんな事あるわけないのに…
自分でそう仕向けたはずなのに…
女名無しの頬を指の背でなぞれば、少し身動ぎして呟いた言葉は、愛しい男の名だった
当然といえば当然か………
やり切れない想いに、これ以上傷付きたくない……
「 女名無し……僕から解放してあげる……
嫌だろうけど、あと一度だけ会うことになるはず
我慢してくれ……さよなら」
白い額にそっと口付け、別れの言葉を言ったところで、眠る女名無しには届かない
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