BOOK1《後編》
□三十二
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はいつくばり俺が、やっとたどり着いたそこで
俺がプレゼントしたドレスを着た女名無しが、独り佇み泣いている
「女名無し…済まない…俺は君を無理に・・」
駆け寄って涙を拭ってやりたいのに、身体が動かない
女名無しには、俺が見えていないのか、全く気付かない
何度も名前を呼び、叫ぶ
女名無し!女名無しーー!
瞳から、頬を伝ってこぼれ落ちる真珠の雫
何処からともなく現れた、懐かしく、それでいて切ない紅い光りが
再会を喜ぶかのように、彼女の足元から螺旋を描きながら、身体の廻りを驚く速さでまわり
頬を伝って顎からこぼれ落ちる雫と重なった
胸を締め付けられる程、哀しい紅い光りを烈しく放っていたのに
雫と重なった事で優しいが、逞しい光りの魂となって、両手を差し伸べる女名無しの身体に溶けていく
光が溶けた個所を大事なものを抱くように、女名無しは幸せそうな優しい微笑みを浮かべている
ふぶく花びらに遮られ、どんどん姿が遠く離れ、見えなくなり、消えていく
「女名無し!!」
ああ、君の傍で居るだけて幸福だったのに
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