BOOK1《後編》

□三十一
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(酒元side 2 )

外出先から時間を見計らって、会社に戻ってみれば、フロアに一つ明かりが灯っていた

やはりというべきか…

俺が直帰の時はこうして一人、残業に勤しんでいたのだろう

女名無しは、ただ俺を避けるために…

外出先から、戻って来るとは、思っていなかったようで

俺の姿を確認するなり、帰宅準備を始めた

慌てオフィスを出ようとする、女名無しの行く手に立ちふさがった

「女名無し…」

俺と視線を合わそうとしない彼女

「…っ離してっ…」

上擦った声で、俺の手を振り払い逃げようとする

俺に、触れられるのも、嫌なのか?

壁に押し付け、女名無しの左右に両手をついて逃げ場を塞ぐ

「女名無し…誤解を解きたいんだ」

話を聞いてくれ。俺達は、まだやり直せるはずだろ?

「綾子とは、昔付き合っていた事もあるし、女名無しと出会うまでは、身体の関係もあった

でも、君と出会ってからは、本当に何でもない!」

信じてくれとしか言えない…

「俺が愛してるのは女名無しだけなんだ

俺は仕事のために女名無しを、蔑ろにしていたのなら、改めるよ

それとも何かあったのか?」







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