BOOK1《中編》
□二十
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沖田さんの車らしき、高級な外車は
磨きぬかれたボディーで独特のフォルム披露し、
パーキング内を、威圧している
私達はその車の前で、押し問答を繰り返す
「乗ってから教える」
「沖田さんの車には絶対乗りません」
足を踏ん張って抵抗する
「乗らないと、返せないよ」
車に乗ったら最後、何されるか…考えるだけで恐ろしい
「なら、もう要りません」
強い口調で睨みあげれば
「怒った顔も、可愛いな〜。そうだ…昨日、女名無しの彼から電話あったんだよね。少し話したんだ」
「えっ!」
「何を話したか、知りたくない?」
こめかみから、髪を梳いて、頬からを伝い、顎を持ち上げる、沖田さんの指先
「本人に聞きますから」
指を払い、プィっと顔を横に逸らす
「聞かれちゃ不味い事も、話さないといけなくなるだろうね」
どうして、そんな愉しそうに、微笑むの?
「…っ」
この人が怖い
「じゃ、車に乗って。静かな所で、これからの事を話そうよ」
これからの事って…何?!二の腕をギュッと摘まれ
「嫌っ!痛いっ。離して!」
「いつまでも、聞き分けない事、言って無いで行こうよ」
そう言うなり肩を抱かれて、車に乗せられそうになる
「いやだったら。離して!」
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