BOOK1短編
□もしも…の未来〜Part2
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大学が休みの間、我が家に寝泊まりしている、沖田さん
弟の匠は出来がいいから、教えがいもあるらしく、隣の部屋からは、二人の笑い声が聴こえる
匠も普段から、剣道馬鹿の姉貴よりも、頭の良い兄貴が欲しかったと、ぼやいてたからな…
沖田さんは、父の工場に赴いて、仕事を教わったりしてるみたい
Tシャツに作業ズボン、タオルを頭に巻いた、沖田さんが、工員さん達と、休憩していた
「名無しちゃん、調度良いとこにきたな。この若いのに、得意の溶接見せてやってくれよ」
古参社員の菅沼のおぢちゃんが、沖田さんに、視線を投げて言うから
「うん、分かった。久しぶりだから、出来るかな…お父さんにお弁当届けたらね」
油に汚れた軍手を嵌めた、沖田さんの腕の筋に、なんだかドキドキしながら、溶接の指南をした
私の夢は、この工場で働いて、道場を続ける事。それでも一度、外で勉強してこいとお父さんが言うから、受験勉強に勤しんでるわけで
子供の頃は、もっと工場も小さくて、お父さんと菅沼さんと僅かな工員さんだけだったから、溶接や、バリ取りなんかも手伝った
私の技に、ひとしきり感心したあと、沖田さんも挑戦していると、様子を見に来た、お父さんも参戦して
夕食時に、職人技を褒められた父が、浮かれて晩酌を交わしている
弱い癖に、お酒が好きなお父さん。直ぐに酔っ払って、お母さんに抱き着き、怒られている
匠と私は毎度の事に、呆れている。沖田さんは、初めは面喰らっていたみたいだけど、晩酌で赤くなった顔で、照れ臭そうに微笑んでいる
沖田さんが、酔ったお父さんを、寝室まで運んでくれた
台所仕事も難無くこなし、お母さんを喜ばせて、すっかり家族の一員になっている沖田さんは、なんだか、楽しそうだ
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