BOOK1短編
□Aohikonohime
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久しぶりに凪いだ海を横目に、漂流物はないものかと、浜辺を振らつく足でさまよい歩く
妾腹ではあったが、豪商の長兄として産まれ落ちた
だが、体が弱く寝付く事が多い私の行く末を案じた父が、都で評判の巫女をよびよせ、占わせた
長じる事は出来ないと告げられ、落胆した両親の顔に幼いながらに申し訳なく思う
なんとか七つを迎えたころ、本妻に健康な男児が産まれ、私は母に守られながら、なんとか生きながらえた
だが、私が十五になった時、母が亡くなり実父と継母は、最低限生きるための食料を私に与え、海に近い山小屋に捨て置いた
寝込んでばかりで、働き手にならぬ息子など、どうなろうと知り得ないということだろう
それでも時折、わたしを思い出したかのように施しを届けさせる父と
憐れに思う使用人達が、差し入れてくれる物で何とか暮らし、一年たとうとしていた
久し振りに晴れたある日、いつも海を眺める岩場へ足を向ける
よろめき歩く、ひ弱な自分が歯痒く、辟易しながら歩を進めた
自分の知らない事をもっと知りたい
里や、都へ行って皆が笑顔で暮せる世にするために、政に関する事に携わってみたい
儚い夢すら、許さぬこの身が恨めしい
低い波が打ち付ける磯を眺め、何も成す事も無く、もうすぐこの命が尽きようとしている事を感じて、苦く思う
見慣れた景色に視線を這わせた
日常にない風景が視線の先に飛び込んできて、はじめは理解出来なくて戸惑ったが、驚きながらも近付いた
何かが打ち上げられている
人か⁈
何も身につけていない女子が、足を海につけたまま横たわっている
近寄ると、まだ息がある
美しい亜麻色の長い髪に劣らない、愛らしい容姿に、鼓動が早くなる
戸惑っている暇などないな
自分のひ弱な身体の何処に、このような力が有るのか驚きながら、女子の冷えた身体を抱き上げて、小屋に運ぶ
囲炉裏の側に褥を敷いて、その上に寝かせ亡き母の形見の着物で、震える身体を包む
年は十四〜五といったところか。同じ年嵩の女子が、何故あの様な所に…
船でも沈み流れ着いたのか………逃げてきたのか………
目を覚ますまで、待つしかないな
獣の皮を女子の足下にかけて、同じ褥に疲れ果てた身体を横たえた。これなら、隙間風を防ぎ、女子も温かいであろう
少し動くだけで視界がゆがみ、鉛のように重い身体を恨めしく思いながら、目を閉じる
このまま逝くのだろうか………
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