BOOK1《後編》

□三十三
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「おいっ綾子!探したんだぞ。何やって…」

慌てた様子の男名無しと綾子さんが、目の前で微笑みあって、二人の幸福な未来が容易く想像できる

オフィスの皆は、冷静さを保ちながらも、驚いているみたい

綾子さんは、愛おしむように下腹部に手をあてて、私にチラリと視線を投げた

見ているだけで、胸が裂けるように酷く痛む

止めて…見せつけないで!本当なら男名無しの隣は…

席を立ちあがり、この場から逃げ出そうとした…エッ…何?歪む視界…桜子が驚いた顔してる…?

目の前が真っ暗になって、足元がグラつき、身体が重たくて立っていられない

彼の声が女名無しと私の名前を叫んだように、思ったのは気のせい?

薄れていく意識の中では、身体がフワフワ浮いて、大好きな香りに包まれた…

そう思ったのは、夢なのかもしれない…

だって…ほとんど眠れない日が続いていたものー‐‐


*


目覚めれば白い天井とアールを描くカーテンレールと、薄いグリーン色をしたカーテンが見える

そっか私、ベッドで寝かされているんだ

椅子の軋む音がしたかと、思うと、桜子が側にきて私を覗き込んだ






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