BOOK1《中編》


□二十八
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遅めの朝食を済ませて、電車に乗った



デートは、車での移動ばかりだったから、電車に揺られるのも良いと思って

それに男名無しの車はミシッション車で、運転中に手を繋ぐのは気が引けるもの

ギアチェンジする時に、うっすら浮かぶ、腕や手の筋に見取れてしまったりするけど…

電車だったらいつでも、手を繋いでいられるし、顔を正面からしっかり見ることもできる

でも、手を繋ぎたいと、なかなか言い出せずに、改札機を通り過ぎれば

ニコリと笑って男名無しが手を差し延べてくれたから、自然に繋ぐ事が出来て頬がゆるんだ

今日は、ずっと離れたくない。どこかしら触れ合っていたい



車窓から見える、平凡な町並みさえも、貴方が横にいるだけで、なんだか違って見えるから不思議

このまま二人っきりで、何処までも行けたらいいのに

一時停車した駅から妊婦さんが、小さな子供の手を引いて、乗ってきた

私達の向かい側に腰掛けたのをみて

「俺達の間にも、早くやってきてくれないかな…」

男名無しを見上げて、不思議顔を浮かべる私に

「赤ちゃん」

私の下腹部に視線を向けて、ニシシと笑う貴方につられて微笑んだ

本当に…本当にそうだったら良いのに…






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